【松田陣平】死んで花実が咲くものか

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まさに白昼夢を見ている様だった。
奇想天外な出来事ばかりで、夢のような5日間を過ごして。






(…………でも、全部現実だった)






アイツと過ごした1週間は決して夢なんかじゃないし、
アイツが生きた5日間も夢じゃない。

14歳で時が止まったまま、15年の時を経て空から舞い降りて来てくれた。

そして、俺と出会って、燃えるような恋をした。
俺も人生の中で1番の恋愛だったと思う。










「死んで花実が咲くものか……か」











枯れてしまった木は花も実も実らないように、人間も死んでしまったらおしまいってことだって言ってたな。










＿＿＿＿だから、私もうおしまいだね？



















「おしまいなんかじゃねーよ、バカヤロー」







アイツが空に帰る前に、1発げんこつでもくらわしてやったら良かったなと後悔する。







(………ほんとバカだよ、お前は)











確かにお前は死んじまったけど、お前を知ってる人達の心の中でずっと生き続ける。





だから、おしまいなんて言わずさ。


生きてりゃきっといいこともあっからさ。







俺らの心ん中で、これからもずっと生きてくれよな……。



1週間、ありがとうな。A。









お前のことは忘れないよ、ずっと。















(……なんて言ったらアイツ調子乗っからやめとこ)















果てしなく広がる澄んだ青空。
ふわふわで美味しそうな雲がゆっくりと流れている。



















「見て！あの雲、綿菓子みたいだね！」














「！」














気のせいだとわかっているけれど、
Aの声が聞こえたような気がした。








「……そうだな」











Aらしいな、なんて思いくくっと喉を鳴らして笑ってやった。







目を閉じる。
こんなに温かい気持ちになったのは生まれて初めてだ。













「陣平くん、ありがとう」













また、アイツの声。
気のせい、気のせいだって分かってる。でも、本当に空でアイツがそう言っているような気がして。

不思議な体験はどうやらまだ続いているみたいだ。
それとも、本当に今白昼夢を見ているのかもしれない。





(……まあ、何でもいいか)










「ありがとう」はこっちのセリフだ、バーカ。
















「生まれてきてくれて、生きてくれてありがとな。A」











〜【死んで花実が咲くものか】おわり 〜

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