アネモネ sho.sakurai (ページ2)

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その容姿に驚きはしたが、気を取り直して、

「あの、このハンカチ落としませんでしたか？」

『あー、そうです。ありがとうございます』
まるでｷﾗｯと効果音がつくような笑顔で彼は返事をする。

私が渡すと、彼は大事そうに持って足早にかけていった。

少し放心状態気味だったが、綺麗なものを見たおかげで、いつもと変わらない景色がなんだか変わって見えた。

「いけないっ、急がないと遅刻だー！！」

慌てて階段を駆け上がり、15階の企画営業部に入る。

入ってみると、何故かみんなの視線を感じる。

------なにか頭についてる？それとも、メイク崩れてる？、もしかして遅刻した？-------

そんなことを考えながら、自分のデスクの方へ向かうとまた私の机に人だかりが出来ている。

はて？、なにか変なものでも置いただろうか？

近寄ってみると、この時期には珍しい、辞令が置いてある。

「んっっ、ちょっと待てよ、辞令ってどういうことだ？」

その紙を見てみると、

［本日付で、早野Aを、東京本社の企画営業部に命ずる］

「まじかーーーーーーー！？」

社内中に響き渡るような声で、思わず叫んでしまった。

そうか、朝から人だかりができていたのは、このせいだったのか、そうか。そうか

妙に納得した私は、ひとつの疑問を感じる。

------本日付ってことは、今から東京本社に行くってことなのか？、じゃあ、大変過ぎないかっ？-----

そこに部長が現れた。

『早野、ちょっと来い』

「はい、分かりました」

そう言ってミーティングルームに入ると、部長から

『分かっているとは思うけど、今日から東京本社だから荷物もって向こうにむかってくれ、ただ、今日は東京本社からお前の上司になる方が来て下さるそうだから、準備しなさい』

「いろいろ、突っ込みたいことはたくさんありますが、今まで、ありがとうございましたってことですよね？」

『そうだね、君みたいな存在を失うのは、勿体ないことだか、上からの命令だから、申し訳ない』

「そうですか、でも、そう思ってくださるだけでうれしいです。では準備してきます。」

そう早口で言うと、目から零れそうな涙を零さないように異動の準備をし始めた。

センチメンタルな気持ちになりながらも
荷物が少ない私は直ぐに片付け終わり、ぼーっと、座っていた。

周りの社員も気を使ってたのか、誰も私に喋りかけてこなかった。

そんな状態が続く中、突然ドアが空いた

ガチャ