触れない、触れられない (ページ29)

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理由ページ29

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『･･･はぁ、』

「どーしたのっ、ため息なんかついて」

『ルリ、』

放課後。
今日も涼太はいつもの先輩と遊びに行くって先に帰った。

ルリと亜嵐も部活のはずで
ひとり外を見ながらぼーっとしていた。

『部活は？』

「ちょっと休憩。顧問もさ、大会近いからってさすがに詰め込みすぎ」

『お疲れ様』

「ふふっ、それはAのほうでしょ？」

『え？』

「片寄くんが転校してきて、どういう訳かAと付き合って、最初の方のAは楽しそうだったけど最近は疲れて見える。」

「･･･なんかあるんでしょ？」

できることなら
ルリには包み隠さず全部話してしまいたい。

だけど、そういうわけにもいかなくて。

･･･ごめんね、ルリ。

『･･･涼太ってさ、人気者じゃん？』

「うんうん」

『だからさ、私も必死なの』

「･･･そっか」

きっとルリには
こんなちっぽけな悩み、見破られてる。

たぶん涼太は自分が楽に過ごすために私を利用してる。
でも、涼太が幸せならそれでいいし
ルリと亜嵐にだって幸せになって欲しい。

誰かが傷つくくらいなら
私が傷ついた方がいい。

だから、悩みも自分で解決する。

「･･･ひとつ、聞いてもいい？」

『うん』

「･･･なんで片寄くんは人に触られるのをあんなに嫌がるの？今日だって、この前のエリカのときだってそう」

『･･･それは私にも分からない』

「･･･Aたちが手繋いだりしてないのも、それが理由？」

『･･･』

「･･･ごめん。何も聞かなかったことにして、」

『ルリ』

「･･･ん？」

『･･･私、涼太のこと、好きだよ』

きょとん、とした顔で私を見つめたあと
少し経って「知ってるよ」って微笑んだルリ。

「部活戻るね」と教室を出ていったあと
ひとり残った私はそのまま力が抜けたように床に座り込んだ。

ルリに涼太のことを聞かれたとき、何も答えられなかった。

だからって
涼太のことが好きなんて言ったってどうしようもなかったのに。

『･･･私って涼太のこと、好きなのかな』

突然出た言葉に
気持ちの確信は持てなかった。

だって、
涼太のことを何も知らないのに
好きになる理由が見つからないから。

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