触れない、触れられない (ページ28)

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「Aから誘ってくるなんて珍しいね」

自販機の前で呑気に飲み物を選んでる涼太。

さっきまでのが嘘みたい。

『･･･まあ、』

「でも助かった」

『･･･え？』

「だって正直めんどくさいじゃん、ああいうの」

「だから、声かけてくれて嬉しかった」

『･･･そう、』

「何がいい？」って言われて
『オレンジジュース』って答えたら
「お礼」って奢ってくれた。

この前の亜嵐のこと、エリカのこと、
話そうかと思ったけど
思えばいつも話してるのは私の方で
涼太は自分のことを話してくれないことに気付いて
やっぱりやめようと思った。

こんなの不公平じゃんね。

『そろそろ戻ろ、ホームルーム始まる』

「Aはさ、なんで聞いてこないの？」

『･･･え？』

「気付いてるでしょ、俺が人に触られるのを嫌ってること」

『･･･』

「･･･知りたい？」

『･･･じゃあさ、私が涼太に隠してること教えてあげる。力ずくで知れるんでしょ？』

私はベンチに座って
立ったままの涼太の目をまっすぐ見つめた。

「ほんと、何言い出すかわかんないね、A」

『それは涼太のほう』

「教えてくれるんだったら普通に教えてよ。そんな無理矢理知りたくもない」

『ふーん』

「今なら俺にハグしてもいいけど？」

『っ、最初に触るなって言ったのそっちでしょ？！』

「ははっ、」

少しだけだけど、
なんとなく気付いてしまった。

だけど、
そんなことが現実世界でありえるわけなくて、
だから確信は持てないけど

もし、そうなら

今、私が涼太を抱きしめたら･･･

涼太はいつも
私に少しずつヒントをくれて
それを濁して別の話題に変える。

涼太、
私はそんなに鈍感じゃない。

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