触れない、触れられない (ページ27)

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静まる教室ページ27

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『おはよー･･･って、なにあれ』

「諦めるどころかヒートアップだね」

朝、教室に入ると
涼太の周りには人だかりが。

ルリも呆れた様子。

「片寄くんさ、ああいうのうんざりで彼女がAだ、って公にしたんじゃないの？」

『あぁ･･･そうだと思う、』

「みんなAには負けないとでも思ってるのかな。は～、私のAちゃんかわいいのに」

『ふふっ、ありがとう、ルリ』

「ヘラヘラしてる場合じゃないよ！ホームルームまで少し時間あるし、自販機にでも誘ってきなよ」

「片寄くんの彼女はAでしょ？」とルリに言われて
昨日涼太の言葉を思い出した。

騙してることが本当に申し訳なくなるけど
こうやって応援してくれてる気持ちは
無駄なものにしたくない。

ルリに行ってくるね、と
私は涼太のところへ向かった。

『涼太』

「あ、A。おはよう」

『あのさ、飲み物買いに行くの、ついてきてくれない？』

「うん、もちろん」

「えー、片寄くん行っちゃうの～？」
「もうホームルーム始まっちゃうよ～？」

「まだ時間あるし余裕だよ。よし、行こう」

『ありがと』

私が先に教室を出ていこうと
涼太に背を向けて歩き出した瞬間
パチン、という音がした。

振り向くと
涼太が女の子の腕を振り払ったようだった。

「気安く触らないでもらえる？」

エリカのときもそうだった。

涼太は人に触れられるのを極端に嫌う。

今も、優しく微笑む表情と裏腹に
目の奥は笑っていない。

なんなら殺意を感じるくらい。

「お、A」

『わ、なんだ亜嵐か』

「なんだってなんだよ。･･･なに、どうかした？」

教室に入ってきた亜嵐と送る視線は涼太。

手を振り払われた女の子は
怖がる表情で涼太を見つめていた。

「A、行こ」

『･･･うん、』

きっと普通だったら
ここで涼太は私の手を掴んで
一緒に教室を出ていくんだろう。

なのに私たちは違う。

涼太は私を追い越して先に教室を出ていった。

それを追うように私も
静まり返った教室を後にした。

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