アマリリス (ページ41)

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バレンタインページ41

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今日は何の花にしよう。

カウンターの花瓶に向かって頭を悩ませていたとき。
パッ、と横から差し出された一輪の薔薇。

私の横では哲也さんが笑っていた。

哲也「今日は何の日か知ってる？」

『今日は2月14日･･･、バレンタイン！』

哲也「そう。外国のバレンタインは男の人が女の人に花を贈るんだよ。だから今日は俺からAちゃんに薔薇をプレゼント」

『素敵！』

哲也「喜んでくれたみたいでよかった」

『ありがとうございます』

店内に差し込む陽の光に向かって力強く咲く薔薇。

･･･本当にきれい。

なんだか今日は店の雰囲気もおしゃれに見える。

バラの香るテラス席に腰を下ろして、
ほっ、と一息つく開店前。

私の手元にはひとつの白い箱。

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「おはよう」

チャラン、とベルを鳴らしていつもの様に店に入ってきた彼。
陽の光が彼の後ろから差し込んでいる。

眩しいなか、振り向くといつものニット帽に今日はマスクをつけてない。
おしゃれなネックレスに、サスペンダー。それにアウターを重ねる彼らしい格好。

『おはよう、隼くん』

「Aさん、俺来たよ」

『うん、来た。来てくれた。早起きよく頑張りました』

「渡したいものって･･･？」

頭にハテナを浮かべる隼くんには今日がバレンタインという感覚がないみたい。

そんな彼に、じゃーん！と白い箱を差し出してみる。

なにこれ！と子供みたいにはしゃぐ姿がかわいくて、
開けていい？とあざとく首を傾げるのに思わず笑みが零れた。

「･･･チョコ、？」

『ガトーショコラっていうの。ねぇ、隼くん。今日は何の日でしょうか』

はっ、と驚いたように目をキラキラさせて私を見つめるその瞳は、真っ直ぐで透き通っていた。

「え、待って、うそ、うそでしょ、だって今日は2月14日、バレンタイン、うそでしょ、ねぇ！」

『ふふっ、隼くん、ハッピーバレンタイン』

「嬉しい！嬉しいです！」

『よかった、喜んでくれて』

「Aさん。好き、大好き。これ、本命ってことでいいんだよね？」

『ふふっ、それは内緒かな』

本命貰った！って私の話なんて聞く耳持たない隼くんは羽の生えた天使のように上の空。

こんなに喜んでくれるなんて、思ってたよりすごい嬉しい。

本命、ね。
それでもいいかも、なんて
隼くんの笑顔を見てたらそう思えてきたり。

私は隼くんの笑顔が世界で一番好きだから。

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