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彼は ページ26

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今日の電車は少しだけ混んでいる。
席が空いてなくて、手すりに捕まって立つと目の前に隼くんの写った広告。

最近、私も忙しくてテレビとか雑誌を見れてなかったから、こうやって仕事をしてる隼くんの姿を見るのは久しぶりだった。



私はこの時思ったの。

毎日カフェに来てくれる隼くんも、哲也さんが淹れたコーヒーを飲んで微笑む隼くんも、私のケーキを美味しいって言ってくれる隼くんも、私に好きって言ってくれる隼くんも、

普通の人なら手の届かない存在であるはずの芸能人なんだ、って。



今の生活が普通に感じてるけど、これは当たり前じゃない。きっと隼くんはこれから先もっと有名になってカフェに来ることも少なくなる。私にとっても手の届かない存在になっていく。



・・・私、独りぼっちになっちゃうのかな。





『おはようございます、』


「Aさん、?」


『わ、北人くん。おはよう』


「・・・どうかしました?」


『北人くん、夢は歌手でしょ?』


「はい。」


『・・・私から離れてく?』


「え?」


『・・・もし、歌手になって芸能人になったら こうやって話せなくなる?私から離れてく?・・・っ、』





俯いて下げた頭を少し上げて目線を北人くんに向けると目が合った。
少しムッ、とした顔をして私の手を握ってくれた。両手で包み込むようにして。





「・・・そんなこと、するわけないじゃないですか。もし俺が歌手になったらAさんのために歌うし、Aさんに届くように歌います。どんなに俺が有名になっても離れたりなんかしない。俺はAさんと話したい。こうやって一緒にいたい。だから変な心配しないでください。そんな顔、見たくないです」


『・・・北人くん』


「あの金髪だって、きっといつでもAさんのこと考えてると思います。じゃなかったらあんな毎日来たりしないです。・・・大丈夫です。最悪俺がそばに居るんで」


『・・・ありがとう、』





本当は抱きしめたいんですけど、って言いながらぎゅっと強く手を握ってくれる。今は不器用な北人くんに救われている。

そんなとき、ちゃらん、となったドア。





『・・・隼くん、!』


「Aさん!」





「・・・おい、ちょっと手離して」


『・・・隼くん?・・・わ!』




北人くんから手を離して ぎゅっ、と強く抱きしめられる。





「好きです、Aさん。大好きです」





ふふっ、北人くんの言う通り、大丈夫みたい。









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くるみ。(プロフ) - 彩華さん» わー!ありがとうございます! (2020年4月16日 9時) (レス) id: dcb2ebda86 (このIDを非表示/違反報告)
彩華(プロフ) - 早速読んじゃいました!アマリリス(^_^)こっちもとっても素敵なお話でした!続編楽しみです! (2020年4月16日 5時) (レス) id: 303c26c9ac (このIDを非表示/違反報告)
くるみ。(プロフ) - 愛さん» あらあら笑 (2018年12月26日 20時) (レス) id: dcb2ebda86 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 北人くんともくっついて欲しくなりました(笑) (2018年12月26日 2時) (レス) id: d15d3a289f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:くるみ。 | 作成日時:2018年9月12日 5時

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