assorted LOVE (ページ10)

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隆二 side

Aに好きなヤツが出来たって聞いてから、また１ヶ月が過ぎて夏がきた。

「お兄ちゃん、同じのもう一杯ちょうだい。」

「お前飲みすぎだろ。水飲んどけ水。」

「大丈夫だよ夏なんだから。汗と一緒にアルコール出ちゃうから。」

「変ないいわけしてんなよ、バカだなほんと。」

「うるさいなぁ。いいからちょうだい！」

相変わらず仲がいい兄妹のやり取りを笑いながら見て酒を飲む。

あれから特に進展してない様子のAと変わらず２人で飲みに行くけど、心から楽しめない自分がいる。

いくらそばにいたって俺を見てくれるのは、ほんの一瞬で、一緒にいるときだけ。

少しでも離れたら、きっと俺じゃなく、アイツを想って、心が見つめてるんだから。

「隆くん髪切ったよね？サイドが短くなった気がするんだけど。」

「うん、切った。やっと気づいた？」

会ってから、もう２時間は経ってるけど。

もっと俺に興味持ってよ。

＂ごめんごめん＂って謝ったあと、俺の髪を指先で撫でたA。

それだけでドキッとする俺に、

「すっごく似合ってる。短い方が私好き。」

そう言って、にこっと微笑んだ。

知ってるよ、Aが好きな髪型くらい。

だから今日、切ってきたんだから。

少しでも俺を見てほしいから。

褒めてくれたのに素直に喜べない。

聞きたいのは、似合ってるとかカッコイイとか、そんなことじゃなくて……。

たった二文字のもっと単純な言葉なんだよ。

あーあ、時間巻き戻したい。

全部、全部……やり直したい。

ふと壁に目をやったAが一枚のポスターを見て聞いてきた。

「隆くんは来週の花火大会……行くの？」

「あー、花火大会かぁ……どうだろう。仕事かな。」

「……そうなんだ。仕事なんだ。」

「Aは？行くの？」

「……うん、約束してる。」

「あいつ……成瀬ってやつと？」

言葉なく頷いたA。

隣にいるだけで、なんでこんなに苦しいんだろう。

答えなんてわかってたはずなのに、なにショック受けてんだろ。

一番聞きたくない話になったって、会えなくなるよりはずっとマシだと思ってたけど。

他の誰かを好きになっていくAの横顔は悔しいくらい可愛くて。

幸せを願うなんてこと、できなくなってる自分に気づかされた。