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「………私、初めてなんです。」
「初めて?」
「この部屋も、指名も……お客様の隣に座るのも、全部これが初めてなんです。」
「マジで?」
「……はい。」
恥を覚悟で告白します。
隆二さんも男心をさらけ出してくれたから。
思った通り驚いた隆二さん。
もしかして、ドン引きしてる?
恐る恐る隆二さんに目を向けてみたら。
彼は予想外の表情をしてた。
変わらず、優しい顔で私を見てた。
「……やべぇな、それ。」
「ヤバいってどういう意味で?引いてます?」
「そっちじゃねぇよ、その逆……嬉しいって意味だよ。」
「……嬉しい?」
「誰かに初めてって言われんの今までなかったからさ。いいもんじゃん、俺が初めてって……なんかすげぇドキッとした。」
そう言ってシャンパングラスを持った隆二さん。
私に一つ手渡して、本当に嬉しそうに笑って口に含んだ。
2人の初めてに、乾杯。
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「そうだ、初めて会った時、隆二さん私がキャバクラで働いてるってなんでわかったんですか?私なにも言ってないのに。」
「あんな場所で一人で酔ってんのは水商売の女くらいだろ。普通の飲食店この通りにねぇじゃん。」
「ここら辺よく来るんですか?」
「行きつけとかはないけどな。」
「じゃあお気に入りの子とか……いる?」
「お気に入りねぇ………それに昇格しそうなヤツはいる。」
「そうなんだ……いるんだ。」
なんだろう、胸が痛い。
隆二さんに接客してる人がいるってわかったら、とてつもなくショック。
私だけがここに座ってるわけじゃない。
隆二さんの隣は、私だけの場所じゃないんだ。
「どうした?急に黙んなよ。」
「………なんでもない……です。」
なに拗ねてるんだろう私……。
出会ったばかりの人相手にバカみたい。
「モモ?」
「はい?」
名前を呼ばれて顔を隆二さんに向けたら。
すっと大きな手が伸びてきて、優しく私のほっぺに触れた。
「もうこの店にしか来るつもりないから。」
「……なんで?」
「昇格したみたい、俺のお気に入りに。」
そう言って、にこっと笑った。
その笑顔と手のひらから伝わる体温に、胸の奥がキューっと鳴いた。
「モモの名刺ちょうだいよ。」
「あっ……うん。」
「なぁ……普通、番号書くだろ。」
「えっ、ケ、ケータイ?」
「それ以外なんかあんの?」
隆二さんは辛口だけど、ときどきかなり甘い。
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☆まぁ☆(プロフ) - 初めまして!いつも楽しく読ませて頂いています(*^^)他の作品も全部ステキですが,こちらの続きも楽しみにしています(*^^) (2019年3月10日 0時) (レス) id: 0222ecc7f8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:くるみ | 作成日時:2018年6月30日 10時