assorted LOVE (ページ42)

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もう会えないと思ってた。

名前も教えてもらえず、二度と笑いかけてもらうことないと思ってた。

２日経った今でも頭の片隅にいた彼が、目の前に座ってる。

私の源氏名を覚えててくれて、お店にまで来てくれた。

………夢みたい。

嬉しい。

めちゃくちゃ嬉しいよ。

この人が、どこか有名な会社の副社長の、今市隆二。

名前までかっこいいとか、なんなの。

「ちょっと、モモカちゃん！？」

彼に見蕩れて立ったままの私に、岩ちゃんは小声で声をかけてきた。

「あっ、すいません。」

「初指名なんだから、頑張って。」

「うん。」

コソコソとそんなやり取りをする私たちを見て、彼は笑った。

ずっと見たかった、可愛らしい笑顔で。

「そんなとこに突っ立ってないで、早く座んなよ。」

脚を組んで、自分の隣をポンポンと叩いてる。

「……失礼します。」

彼の隣にそっと腰を下ろすと、ふわっと甘い香水の匂いがした。

ダメだ……

この匂いと彼の雰囲気にクラクラしちゃう。

いつの間にか岩ちゃんは部屋を出てて、２人きりになってた。

大きなシャンデリアと真っ赤なバラが飾られた豪華なＶＩＰルームに２人。

緊張しすぎて息できない。

でも、なにか話さなきゃ。

「あ、あの………今市さん」

「隆二でいいよ。って、俺名前教えてないよね？」

「そうなんですけど……今市さんは有名な副社長さんだって伺って。」

「だから隆二でいいって。」

「………隆二さん、私なにも知らなくて、この間はすごく失礼なことしてしまってすいませんでした。」

「失礼なことなんかした？」

「お水……買わせてしまって。」

「あれは俺が悪いんじゃん。モモが謝ることじゃねぇよ。」

うわっ……モモ、だって。

なんか、距離が縮まった感じ。

まだ誰にも呼ばれたことのない、隆二さんだけの呼び方。

本名じゃないけど、これは嬉しい。

「隆二さん、今日はなんで……」

あの日、ぶつかって話しただけの私を、どうして指名してくれたの？

「………金に困ってそうだったから。」

「え？」

確かに困ってるけども。

「それに俺の名前、知りたかったんだろ？だから、教えてやろうと思って。」

「……はぁ。」

だからってわざわざお店じゃなくても。

「ていうのは言い訳で……２日間コンビニで張ってたけどお前来ないから。」

＂店聞いといて正解だった＂そう言って笑う彼に、どんどん気持ちが傾いていく。