assorted LOVE (ページ40)

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彼はお店の冷ケースからお水を一本取って、レジに向かう。

お尻のポケットから財布を出して、お金をレジに置いた。

お釣りを受け取ると、タバコをスーツの内ポケットに入れながらこっちに歩いてくる。

真っ直ぐ、私を見ながら。

目が合って、胸がドキッとした。

やっぱりこの人、かっこいい。

キリッと深い目が少し怖さもあるけど。

私に近づくにつれて口元がちょっと緩んで。

「ほんとごめんな。」

申し訳なさそうに眉を下げて、そのすぐあとに、柔らかく微笑んだ。

困った顔も笑った顔も、どっちもいい。

「飲む？」

彼は腰を屈めて顔をのぞき込んできた。

「………飲む。」

返事をすれば、フッと笑ってキャップを開ける。

「ガキみてぇだなお前。」

なんて笑いながらペットボトルをくれた。

「……ありがとう。」

その笑顔が、ほんとツボ。

ドキドキしながら水を体に流し込む私に、彼はまた笑いかけて。

「女があんま飲みすぎんなよ？」

そんなセリフを残して頭をポンと撫でたあと、＂じゃあな＂って、去っていく。

……私、そんなに酔っ払って見えるかな？

ていうか、なんか、寂しい……。

もっと、もう少し、話してたかったな。

初めて会った人なのに不思議。

これが一目惚れってやつなのかな。

彼の後ろ姿を見つめながら、ペットボトルにキャップを……キャップを……

って、あれ？

キャップがない！！

そう気づいたら、私の足はすぐ走り出した。

黒のスーツを着た彼のもとへと。

「あ、あの！」

「ん？俺？」

後ろから声をかければ、振り向いてくれて。

「あの……キャップ……ペットボトルのキャップ……持ってませんか？」

「キャップ？…………あ、ごめん。俺持ったまんまだった。」

＂何かと思ったぁ＂って言葉を続けて、私の手の中にあるペットボトルにキャップをはめてくれた。

目の前に立つ彼の香水の匂いにドキドキして。

キャップを持つ長い指に見とれて。

これが最後かもしれない……

そう思ったら、私は思わず口にした。

「名前……教えてもらえませんか？」と。

彼は私の目をじっと見て。

「お前、どこの店？」

そんなことを聞いてきた。

私がキャバクラで働いてることなんて一言も話してないのに。

「……バタフライ。」

だけど私はこのチャンスを逃したくなかった。

「名前は？」

「……モモカ。」

彼の名前が聞けたのは、初めて会った日から２日後の夜だった。