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「………隆二くん。」
こっちをじっと見ながらゆっくり近づいてくる。
街灯に照らされた隆二くんは、私ではなく、私の後ろに立つ敬浩さんを見てる。
睨むわけではなく、ただ無表情で。
笑っていない彼はなんだか怖い。
「Aちゃん、彼氏できたんだ?」
振り向いてみれば、敬浩さんも同じような顔で隆二くんを見てる。
もう一度隆二くんに目をやると、もう、すぐ目の前にいた。
「はい、できました。」
「俺はAちゃんに聞いたんだけど。」
「その手、放してもらえませんか。」
「Aちゃんが泣きそうな顔してるのって君のせい?」
敬浩さんの言葉を聞いた隆二くんは、やっと私の顔を見た。
だけど泣き顔なんて見られたくなくてすぐに下を向いた。
「彼氏なら女の子泣かせちゃダメじゃん。またこんな顔にさせたら、そん時は本気になるよ俺。」
そう言って手を放した敬浩さん。
本気になるってどういう意味?
「渡しませんよ絶対。俺のなんで。」
困惑する私を置いてけぼりして、二人は話を進めてく。
なにこの状況……。
「じゃあ、俺帰るわ。」
それを最後に敬浩さんの足音が遠のいて、この場には私と隆二くんの二人きり。
なんだか気まずい。
ていうか、なんでここに居るの?
「………なにしに来たの?」
「迎えに行くって俺言ったじゃん。」
「来なくていいって言ったのに。」
気まずくて顔を上げられないでいたら、隆二くんがそっと右手を握った。
繋いだ手を見たらまた涙が浮かんだ。
本当は来てくれたことが嬉しかったから。
でも素直になれなくて、可愛げのないことばかりを口にした。
「あの人と帰りたかった?」
「あの人って敬浩さん?」
「だから来なくていいって言ったの?」
「なわけないじゃん。敬浩さんは関係ない。」
「じゃあなんであんなこと言ったんだよ。俺はちょっとでも……会いたかったのに。」
「私だって………」
会いたかった。すごく、すごく会いたかった。
なのに、それを言わせてくれなかったのは隆二くんじゃん。
「……帰り、女の子とチャリに乗ってるとこ見たの。隆二くんの周りにはいつも女の子がいるから……私じゃなくてもいいんだって思ったの。」
「先輩、それさ…」
「誰にでも優しくて誰にでも同じようなこと言って、誰にでもキスするんでしょ。」
「いや、だから…」
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☆まぁ☆(プロフ) - 初めまして!いつも楽しく読ませて頂いています(*^^)他の作品も全部ステキですが,こちらの続きも楽しみにしています(*^^) (2019年3月10日 0時) (レス) id: 0222ecc7f8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:くるみ | 作成日時:2018年6月30日 10時