assorted LOVE (ページ22)

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隆二 side

「あー隆二、ごめん、ありがとな。」

「うん、いいよ。サボりたかったしラッキーってことで。」

「でもマジで隆二にはラッキーだったんじゃね？」

「………見てよこれ。」

「なにそれ、タオル？」

「また話すきっかけ出来ちゃった。」

「あっ、いちご先輩の？」

保健室からグラウンドに戻ると、ちょうど試合は終わってた。

臣が２点を入れて、うちのクラスは優勝。

体を動かすのは好きだし、サッカーも好きだし、優勝の瞬間をみんなと喜びたかった。

けど、それよりも、俺はチャンスを逃したくなくて試合を放り投げた。

好きな人が目の前で困ってて、助けないわけがない。

なにも接点がなかった好きな人に、近づけるチャンスだったんだから。

その人は今日も前髪をひとつに束ねてちょんまげヘアをしてた。

いちごのヘアゴムで。

.

先輩を好きになったのは、俺が入学して２ヶ月経った梅雨の時期。

朝から親父とケンカしてムシャクシャしてた日の放課後。

その日は台風みたいな強風で大粒の雨が降ってた。

３階の教室からたまたま外を見ていたら、昇降口から出てきた女の子が突然大きな声を上げた。

「うわー！」と。

なんだろうと思って声がした方を見たら、女の子が持っているビニール傘がひっくり返ってて。

隣にいるもう１人の女の子は、それを見て爆笑してて。

風に煽られた傘を懸命に直した直後、強い風が吹いたのかまたひっくり返って。

「なんなのこの風ー。うざーい。」

ぷんすか怒ったその人は諦めたのか傘をささずにビショ濡れになって帰っていった。

マンガみたいなコントみたいな状況を友達と楽しそうに笑ってて、それを見たらムシャクシャしてた気持ちがどこかに飛んでってた。

気づいたら、その人が校門を出るまで姿を目で追っていて。

ひとつ覚えたのは前髪をいちごのゴムで結んでること。

次の日から俺はすれ違う生徒の中に、いちごのゴムを探してた。

だけど、なかなか見つからなかった。

廊下にも昇降口にもその人の姿はなくて。

やっと見つけたのは、サッカー部が練習してるグラウンドだった。

臣を見る女子の中に、その人はいた。

だから、先輩も臣が好きなんだって思ってた。