休暇 ページ15
キャスター消滅を以て、聖杯戦争が再び始まったと言うのに、遠坂さんは私に暇を出した。その言伝をくれた言峰さん曰く、英雄王を甘やかし過ぎだ、と勘当されたらしい。お役御免って訳でもないが、私の手には数日を遊び歩けるくらいの予算があった。かと言って私は服飾なんて物に興味は無いし、関心を引くとしても雑貨や小動物が関の山だ。英雄王に魔力を引き続き流してはいるが、先日バーサーカーから受けた傷は塞がったものの痛むし、病み上がりの身で無茶も出来ない。
「うーーん…とりあえず、なんか食べようかな」
遠坂さんの家では、食事なんて余り物だったし。私を不憫に思ってか知らないが、週に１度くらい言峰さんがキリストみたいに恵みのパンをくれたけど。
《貴様、何をしている》
「…遠坂さんに聞きませんでした？暇を貰いましたので、こうして散歩していました」
《暇を貰ったにしては、随分と気を揉み、苦しそうではないか。アレに手向けられたのは首輪か？》
首に感触を感じたかと思えば、私が人の目を嫌って路地裏に来たのを良い事に、英雄王が実体化して首に触れていた。そこには、今朝方遠坂さんが付けた赤い宝石のネックレスがある。
「…さて、どうでしょうかね。もしそうなら、私は咎められるでしょうね。なんせ、貴方に魔力だけでなく自由すら与えた為に、放逐された身ですから」
英雄王は見るからに不機嫌な顔をした。
「そも、この我に雑種如きが意見出来る訳は無い。貴様を利用するだけして挙句に放し飼いか。アレも随分な手を使う」
「…その言葉だけで充分です。早くお戻り下さい。私と一緒に居たら、遠坂さんに一体何を言われるか分かりませんよ」
もう既にバレているのだけど、ね。だって首飾りの宝石が熱を持って熱いもん。魔力がジワジワと食い尽くされ始めていて、魔術師って有能であればある程に【手】が多いから困る。押し付けておいて面倒を起こすと見れば引き剥がそうとする。ああ、嫌になる。
「…英雄王、早くお戻り下さい」
「熱いな。…暫し待て。動くなよ」
「は──」
はい？という言葉を声にするより速く、遠坂さんが作った首飾りは粉々に砕け散った。英雄王手ずからの握り潰しによって。
「英雄王、何をしていますか！そんな事したら」
「ふん、雑種如きが繕った小道具程度、素手で破壊する事など容易いわ。…さて、これで自由だな」
「……部屋があればイイなぁ」
ああ、燃やされかねない。
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まつよ - 面白かったです。是非、ステイナイトの時の主人公を見てみたいです。 (2019年5月29日 21時) (
レス) id: 4baad1a05f (このIDを非表示/違反報告)
かなと - 編集画面をよく読みオリジナルフラグをお外し下さい違反です (2019年5月10日 15時) (レス) id: 483535372f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：華苑 | 作成日時：2019年5月10日 11時
