心情 ページ11
おい、と聞こえた気がした。目を開けると、アップで英雄王の顔が見えた。
「…おはよう、ございます?」
「ふん、寝起きに王の顔を見上げた上で挨拶が口に出来るとは感心だ。…雑種、傷の具合はどうだ?」
「へ?」
体を起こせば、いきなり言われた。心配、しているのかな。雰囲気も柔らかい。何か、あったのかな。私に対しての態度が変わるような事って…過去とかしか無いよなぁ。
「…王よ、何を知りました」
「ほう。知られては困るのか?貴様にとって、貴様の命の軌跡は知られるべきではないと?」
やっぱり過去か。誰だ、口滑らせたの。遠坂さん?それとも、言峰さん?
「あのですね、英雄王…物申す無礼を承知の上で声に出させて頂きますが、私の過去──軌跡というかルーツですね。それを知ったからと言って、貴方が私に対して態度を変えたり気を遣われる必要は皆無です。むしろ、抵抗しなかった愚かな小娘と嘲って頂いた方がマシです。同情とか労りとか、その様な心情を向けられるのは屈辱でしか無いので」
「…何を恐れている?華苑よ」
──は?
「なんの話ですか…私は、何も恐れてなど」
「いいや、貴様は恐れているぞ、雑種。その年で、この世の醜悪を身に浴びて来た貴様は、死ぬ事ではなく、失う事を恐れている。今の自由な生活を失うのが怖いか?この聖杯戦争で、己が紡ぎ上げた自由を崩されるのが怖いか」
英雄王が何を言っているのか、理解出来ない。否、理解したくないのだ。頭が警鐘を鳴らしている。耳に聞き入れるなと。
「…令呪を以て命ずる。アーチャー、黙って」
令呪一画。
「逃げるでないわ。たかが令呪如きに、この我の言が打ち消されると思うな」
「重ねて令呪を以て命ずる…英雄王、黙って」
令呪二画。
「黙らぬ。貴様の返答を聞くまでは黙らぬぞ」
「…っ、右腕の令呪全てを以て命ずる!!英雄王、何も言わないで!」
悲鳴のような声と共に、右腕の令呪が色を失った。目を伏せた英雄王は控え目に、いっそ今まで見た姿の中で最も優しく年上らしい表情で言った。
「それが、お前の答えだろう。華苑、もう我は何も言うまい。貴様の過去も、口に出さん」
息が上がる。立て続けに使った令呪の反動か、魔力が高速で体内を巡っているようだ。
⋮
英雄王と確執のような問答があってから数日、私は彼に顔を合わせてはいない。魔力を何度か吸われていたが、特に困りはしないし。
「雑種。キャスターとやらの討伐に向かうぞ。お前も付いて参れ」
こんな話、寝耳に水だった。
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まつよ - 面白かったです。是非、ステイナイトの時の主人公を見てみたいです。 (2019年5月29日 21時) (レス) id: 4baad1a05f (このIDを非表示/違反報告)
かなと - 編集画面をよく読みオリジナルフラグをお外し下さい違反です (2019年5月10日 15時) (レス) id: 483535372f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:華苑 | 作成日時:2019年5月10日 11時