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39 繋ぐ ページ42

「悲鳴嶼さん、そこの門を左に曲がりますね」


「ああ」


今、行冥さんと手を繋いで歩いている。
嘘のように思う。
夢なのかもしれない。

しかし、手の感触は紛れもない真実である。


「すまないが、街を出るまで手をひいてくれないか」
「は、はい」


そう答えたのがついさっき。


彼が町中を苦手とするのは初めて知った。
普段過ごしている家や山はまだしも、初見で人が多いとどうにも歩くのが難しいらしい。

いや、確かに彼が盲目なことは知ってるけど普段の行動があまりに自然すぎて忘れていた。


山の中なら枝が折れようが多少のことはどうでもいいが(地主は産屋敷様)町なら看板ひとつ壊せば大問題だ。
屈まないと軒にぶつかるし、7尺以上あると平穏に町中を歩くこともままならない。



「すまない。町は苦手でな」

「いえいえ」

山道をなんなく走る彼の言葉に思えないが、彼と手を繋げるのは嬉しい。


夜だからか周りは男女が多く、その人たちと同じことをしていると考えるとまた顔に熱が集まった。

「えっと、目の前に大きな看板があるので少し右にそれますね…あ」


声が跳ねるのを必死に押さえて冷静を装っていると、ふと、先ほどの警官と目があった気がした。
やばい。
刀を隠さなきゃ。


する、と行冥さんの腕に触れるとピクリと眉が動いた。

「警官が見ています。すみません、こっちの方が自然なので腕をとりますね」

そう耳打ちし、彼の腕の後ろに刀を添えてそれごと抱き締める。

腕を組むこの体勢なら体に隠れて刀は見えないはず。
警官の方を見ると、やはりこちらを警戒していた。


息がつまる。
自分でしておいてなんだが、ものすごく恥ずかしい。


かつてこれほど密着したことがあっただろうか。
刀をまき混んでいるとはいえ彼の腕は太くて暖く、逞しかった。

「…すみません、もうしばらくなので…」


警官の顔を横目で確認しながらそう答える。
行冥さんはやはり静かだった。

40 重ね→←38 如く



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設定タグ:鬼滅の刃 , 悲鳴嶼行冥 , 胡蝶しのぶ   
作品ジャンル:アニメ
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春駒(プロフ) - b0t1s26さん» 悲鳴嶼さん推しがいっぱい…!!嬉しいです!更新頑張ります! (2020年4月6日 17時) (レス) id: db12751af0 (このIDを非表示/違反報告)
b0t1s26(プロフ) - ひめじまさん推しなので嬉しいです!更新楽しみに待ってます! (2020年4月5日 23時) (レス) id: ee722d4776 (このIDを非表示/違反報告)
春駒(プロフ) - ツカサさん» 悲鳴嶼さん格好いいですよね…!!更新頑張ります! (2020年4月5日 11時) (レス) id: db12751af0 (このIDを非表示/違反報告)
ツカサ(プロフ) - ひめじまさん大好きなので、めちゃんこ好きです……!文才も分けて欲しいくらい!最高です!応援してます。 (2020年4月5日 6時) (レス) id: f3ba525ade (このIDを非表示/違反報告)
春駒(プロフ) - もむさん» 誤字脱字のご確認ありがとうございました!早速直します! (2020年3月30日 23時) (レス) id: db12751af0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:春駒 | 作成日時:2020年2月11日 16時

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