【鬼滅の刃】裏切り者の継子【悲鳴嶼行冥】

31 怪我 ページ33

頚を落とし、刀を振って血を落としてから鞘に納める。

ここはこいつで最後かな。


常中はもう二年ほど続けている。継続すればするほど体力が増すのが実感できた。

今なら行冥さんの全速力にもついていけるかもしれない。


「ふー…。玄弥、そろそろ休憩にしよっか」


そう言って振り向いたが、後ろに玄弥はいなかった。

嘘、はぐれちゃった。
今日は玄弥に合わせたはずだ、ついてこられないわけがない。


銃声の音と、獣のような唸り声。
続いて玄弥の悲鳴が聞こえた。


しまった、鬼はまだいたんだ！


脳裏に【死】という文字が浮かぶ。


声を便りに林を駆け抜けると、玄弥が鬼と対峙していた。

玄弥は木の根元にもたれていて、右脇腹を押さえていた。


「岩の呼吸、弐ノ型 天面砕き！！」


頚をはねると玄弥のもとへ走る。


押さえた部分にはベットリと血がついていた。



「…A…さん…」

「動かないで！！ひどい怪我をしてる！」


私がいたのに守れなかった。


私がもっとしっかりしていれば、

あの子たちも死ななかったのに。



駄目だ、今は玄弥のことを考えないと。
頬をピシャリと叩いて玄弥に向き直る。

出血しているのは腹部から。

急いで鞄から救急セットを取り出した。





消毒しようと邪魔な服をはぐ。

そのとき傷口に少し触れたが、


「嘘…」

あるべきところに肉はなかった。


えぐられるような傷は、内蔵まで到達していた。
こんなの応急処置で対応しきれない。


臓器が壊れていたら即死だ。



さあっと血の気が引く。

あの時ちゃんと断ればよかった。

だめ、死んじゃう。
まただ。また助けられなかった。



あの子達の姿が玄弥と重なった。

　

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