30 癇癪 ページ32
あれから二年が経った。
「すみません、もう食べられないです」
「あれ、少し多くよそっちゃった?」
ある時を境に玄弥は急に食べなくなった。
好物のスイカを出しても食べるには食べるが勢いというものがない。来た頃は喜んで食べてたのに。
一年ほど前だろうか。
刀の色が変わらないと癇癪をおこし、暴れるようになった。
玄弥は呼吸が使えなかったのだ。
それは仕方のないことだし、そっとしておこうと行冥さんと相談して決めたのだが、癇癪は収まらず何かにあたることが多くなった。
今は行冥さんの討伐について行ってるからか、荒々しさはなりを潜め普段通りの生活を送っている。
鬼と戦うのがストレス発散になったのかもしれない。銃を使えば玄弥一人でも何匹か鬼を倒せるそうで、行冥さんも誉めていた。
その腕前は行冥さんいわく相当らしい。
私も練習してるところをたまに覗くが、はずしたところを見たことがない。刀にも負けない戦力になっていると思う。
とはいえ。
「討伐に連れていってください」
それは無理があるのでは。
私は丁度靴を履き終えたところだった。
生憎、柱合会議で行冥さんは屋敷にいない。
ついて行くこと自体行冥さんもいい顔はしないが、柱だし、守りきる自信があるからで、私となると話は別だ。
「絶対にダメ」
玄弥の強さは分かっていたがそれでもついて行くことは危険だ。
いくら強くなったとはいえ相手は鬼。一瞬の油断が死に繋がることは多々あるし、私自身そうなった隊士をよく見てきた。
柱の行冥さんはともかく私では手に余る。
だめよ、と断ったがそれでも玄弥は食い下がり、「連れてってください!」といって聞かない。
普段の私なら絶対に折れず、藤の香炉を焚いてさっさと出ていったかもしれない。
しかし鬼と対戦することによって癇癪が収まるのでは、と思うと強く言えない。
それに、私も階級は甲である。人一人守りながら鬼と戦える自信もあった。
「…わかった。でも、危なくなったら絶対逃げてね」
そう言ったのがつい二刻半ほど前。
何で連れていったのか死ぬほど後悔している。
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春駒(プロフ) - b0t1s26さん» 悲鳴嶼さん推しがいっぱい…!!嬉しいです!更新頑張ります! (2020年4月6日 17時) (レス) id: db12751af0 (このIDを非表示/違反報告)
b0t1s26(プロフ) - ひめじまさん推しなので嬉しいです!更新楽しみに待ってます! (2020年4月5日 23時) (レス) id: ee722d4776 (このIDを非表示/違反報告)
春駒(プロフ) - ツカサさん» 悲鳴嶼さん格好いいですよね…!!更新頑張ります! (2020年4月5日 11時) (レス) id: db12751af0 (このIDを非表示/違反報告)
ツカサ(プロフ) - ひめじまさん大好きなので、めちゃんこ好きです……!文才も分けて欲しいくらい!最高です!応援してます。 (2020年4月5日 6時) (レス) id: f3ba525ade (このIDを非表示/違反報告)
春駒(プロフ) - もむさん» 誤字脱字のご確認ありがとうございました!早速直します! (2020年3月30日 23時) (レス) id: db12751af0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:春駒 | 作成日時:2020年2月11日 16時