【鬼滅の刃】裏切り者の継子【悲鳴嶼行冥】

15 夢 ページ17

夢を見た。

自分の体は小さく、手足は短い。
あの藤の香りのする家にいて、目の前ではさよや他のみんなが遊んでいた。


おそらく、鬼がくるまえのことだろう。


そばには行冥さんが座っていた。
髪型や背の高さは変わらないものの、着物からのぞく腕は折れてしまいそう、と形容してしまうほど細かった。


この細腕が筋骨隆々になるんだから、相当な修行を積んだに違いない。


じっと見つめているとそばに私がいることに気づいたようで、にこりと笑って頭を撫でてくれた。

久しぶりの感触だった。



「行冥さん、あのね、今日の夕飯はお魚が食べたい」

子供の一人がそういうと、彼は柔らかに微笑んで口を開いた。

「なら、今日は魚を釣ろうか」


立ち上がって玄関に向かう。確か釣り道具は玄関に置いていたはず。
これが夢の中だとわかっていても彼と話すのが懐かしくて、記憶を頼りに棚を漁ってしまう。
鬼関連でない雑談なんていつぶりだろう。

目当ての魚籠と竿をみつけて、いざ行かんと戸を開けると彼は不思議そうに首をかしげた。

「A、手を繋いでくれないのか？」


そうだった。



「あぁ、道具をとってくれたんだな。それは私が持とう」

両手を塞ぐそれらをひょいと取り上げ、こちらに手を差し出してくる。

おそるおそる手を取ると、行冥さんは近くの川へとゆっくりと歩き出した。

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