46 嗜み ページ49
棚の上にはある冊子が乗っていた。
表紙には琴や尺八のほかに見たことのない楽器が描かれている。
「千寿郎くん、これはなに?」
「演奏会の演目です。
少し前、兄に連れて行ってもらったんです。日本の楽器のほかに西洋から輸入した珍しい楽器もあって、すごく楽しかったです」
ペラリとめくると英語で書かれた文字と楽器の挿し絵があった。
西洋の楽器は金属でできているのか黄金や銀色に輝いている。
「よもやよもや、そんなに気に入っているとは知らなかった!!」
「あ、兄上!」
後ろには煉獄さんが立っていた。刀を携えていて出掛ける気満々だ。
「そろそろ討伐に向かうぞ、A少女」
「お待たせしてしまってすみません。すぐに支度しますね」
しまった、少しお喋りしすぎたようだ。
冊子を置いて、刀や荷物をまとめるため立ち上がる。
「楽器…」
にこっと笑う千寿郎くんの声が耳に残る。
楽器なら…
「なんだ、A少女も興味があるのか?」
図星だ。
言い当てられるほど顔に出てたんだ、と己の顔を恨む。
今は討伐の途中。
鬼がいるところまで走っている最中だ。
「すみません、顔に出てましたか」
「ああ!A少女も気に入ってるとはな!何か習っていたのか?」
「習ったことはありませんが、よく悲鳴嶼さんが尺八を吹かれるので、何曲か知ってるんです」
何時間も吹き続けるから行冥さんの持ち曲は豊富である。小さい頃は各々好きな歌をねだったっけ。
さっきの絵のなかには尺八もあった。
知ってる楽器もあるから楽しんでくれるに違いない。
そう思った瞬間、木の根っこか何かに足をとられ派手に転んでしまった。
叫ぶ間もなく地面に叩きつけられる。
早く走っている分衝撃がすごい。
何回か転び、大木に打ちつけられてやっと止まった。
「いった…」
とっさに受け身をとったものの、その手がじんじんと痛い。
うそ、折れてる!?
打ち所が悪かったのか、手首が今まで見たことのない方向に曲がっていた。
「れ、れれ煉獄さん、どうしましょう!!」
「む!!どうした、骨折か!?」
手に気をとられていたが、足も変な方向に向いている。
こんなひどい怪我は久しぶりだ。
鈍痛に耐えるとじわりと脂汗が浮かぶ。
煉獄さんが烏を呼ぶ声が聞こえた。
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春駒(プロフ) - b0t1s26さん» 悲鳴嶼さん推しがいっぱい…!!嬉しいです!更新頑張ります! (2020年4月6日 17時) (レス) id: db12751af0 (このIDを非表示/違反報告)
b0t1s26(プロフ) - ひめじまさん推しなので嬉しいです!更新楽しみに待ってます! (2020年4月5日 23時) (レス) id: ee722d4776 (このIDを非表示/違反報告)
春駒(プロフ) - ツカサさん» 悲鳴嶼さん格好いいですよね…!!更新頑張ります! (2020年4月5日 11時) (レス) id: db12751af0 (このIDを非表示/違反報告)
ツカサ(プロフ) - ひめじまさん大好きなので、めちゃんこ好きです……!文才も分けて欲しいくらい!最高です!応援してます。 (2020年4月5日 6時) (レス) id: f3ba525ade (このIDを非表示/違反報告)
春駒(プロフ) - もむさん» 誤字脱字のご確認ありがとうございました!早速直します! (2020年3月30日 23時) (レス) id: db12751af0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:春駒 | 作成日時:2020年2月11日 16時