【鬼滅の刃】裏切り者の継子 ー 続 ー【悲鳴嶼行冥】

64 噂話 ページ21

獪岳side



「な、お前Aってやつ知ってるか？」

人が集まるとこういう下らない話に発展するのは常である。

A。今一番聞きたくない名前に「…知らねぇ」と、誤魔化した。



「おいなんだよ、早くいえよ」

「噂になってんだけどさ、その子、獪岳のこと好きなんだってよ」


「は？それ本当かよ」

「噂によると相当可愛い子らしいぞ」

「マジかよ羨ましすぎんだろ」



好き勝手言う奴らに見えないよう緩んだ口もとを手で隠した。


あの時のろまがいった言葉はあながち嘘ではないらしい。





俺もAを好いていた。


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「獪岳は魚釣りうまいよね」

にこりと笑う顔が可愛かった。



「心配だから」と盲目の男の横をついて回るのはもはや日常で、その男も満更ではない風で腹が立った。

一人で金を稼げる年になったらAを連れてあの寺を出る。

あの男も俺のことを評価していた。
大人になりさえすればもっとうまく生きていける。俺の価値を腐らず発揮できる職に就ける。

そうすればAもあの男の事など忘れるだろう。




あの家で、あいつらが口々に夢を語るなかAの目を見て誓ったことがある。

「大きくなったら、Aと暮らしたい」
　

真剣に、手を握り正面を向いていった言葉だったのに。



「今も暮らしてるよ？」

そういうことじゃねェ！



どういうわけかAには伝わらなかった。

あの夜もそうだ。
一緒に行こうと誘ったのに、あいつは手を払って寺に戻りやがった。
俺よりあいつらを取った。

それがなにより悔しかったし、

俺の存在を否定されたようで憎かった。


「……」

しかし、現実は違ったらしい。
Aはてっきりあの男を好いていると思ったが、まあ、鬼にやられて考えが変わったんだろう。

邪魔するやつがいないのは好都合だ。

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