58 褒美 ページ14
「ただいま戻りました」
そういって頭を下げる。目の前に立つ行冥さんはやはり涙を流していた。
「体はもういいのか」
「はい!骨も完璧に修復していました」
「なら明日から討伐に行きなさい。それから、昼の鍛練は早めに切り上げるように。用事がある」
ーーーーーーーーーーー
「南無...こちらだ」
お昼の鍛錬の後、行冥さんは屋敷を出て修行場の方へ歩き出した。
うわぁ、超本格的しごきルートだ。
蝶屋敷で鈍った体を一気に引き締める地獄の鍛練が始まる。
それで今まで何度泣かされたことか。
治ったはずの腕や足が不思議と痛み、憂鬱な気分になってしまう。
彼の後ろを歩く速度が遅くなるのは自然なことである。
しかし。
「あれ...?」
気づけば普段使用している修行場を通り越し、街の麓へ差し掛かっていた。
行冥さんの足は町の方を向いていたのだ。
ーーーーー
烏が誘導してくれるから間違いではないのだろうけど、町中でどんな修行をするんだろうか。
町に着くと行冥さんがおもむろに片手を差し出す。それをとって人混みの中へ入ることにした。
町では手を繋ぐ、というのが暗黙の了解になっていた。
行冥さんの大きな手のひらはあの頃を思い出して懐かしい気持ちになる。
それに、いつもより優しく握ってくれている気がして嬉しくなった。
「あ、そこの看板危ないですね。左によりましょう」と道案内しているうちに烏が案内したのは音楽のホールだった。
赤のビロードに金銀の刺繍が施され、垂れ幕がかかっている。
他の建造物より一際豪華に造られているそこに、人が吸い込まれるように入っていく。
そして行冥さんもその後に続く。
「えっ…えっ」と驚く私をよそに行冥さんは「どうした」と平然ときく。
しかしその口もとが緩んでいるのを見逃さない。
「あの、もしかして、煉獄さんからなにか聞きましたか」
「あぁ。Aは楽器が好きなのだろう」
だから、今日連れてきてくれたんですか…?
ブワ、と顔に血が集まる。
嬉しい。
心の底から。
しかし頭のどこかでは冷静にこの事を不振がっていた。
行冥さんが優しい。優しすぎるのだ。
少し前から彼の優しさは異常だ。
今までそんなそぶり少しも見せなかったのに。
それでも、好きなところに連れていってくれたという事実に簡単に上書きされた。
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リリア(プロフ) - 悲鳴嶼さん推しなのでこの小説めっちゃ好きです!これからも更新頑張ってください!! (2021年6月14日 19時) (レス) id: a1c1a0f2f0 (このIDを非表示/違反報告)
春駒(プロフ) - 莉弥さん» そう言っていただけて嬉しいです!!コメントありがとうございます!! (2020年6月20日 22時) (レス) id: db12751af0 (このIDを非表示/違反報告)
春駒(プロフ) - ろーずてぃーさん» 善逸くんのおかげでボコボコ回避です!更新頑張ります! (2020年6月20日 22時) (レス) id: db12751af0 (このIDを非表示/違反報告)
実弥さんの胸に飛び込みたい人(プロフ) - 毎回楽しませてもらってます!自宅学習頑張ってくださいね! (2020年6月15日 18時) (レス) id: 52a01aa650 (このIDを非表示/違反報告)
ぽけこ - 面白いです!この後どうなる事やら…続きが楽しみです!((o(^∇^)o)) (2020年6月14日 20時) (レス) id: 2100e824f5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:春駒 | 作成日時:2020年4月13日 22時