秘密を知った夜から ページ9
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養成学校へ入って初めての朝、夢見の悪さでAは目が覚めた。
夢に見たのは、自分の運命を知ってしまった夜。
たった9歳で、世界の何たるかを知るはめになった。
＊＊＊
塀の上に立って、Aは絶望していた。
その日の昼間、鬼ごっこの最中にコマドリを見た気がした。
エマ達が3人で飼っていた小鳥。
姉の旅立ちの日に逃げ出した小鳥。
好奇心で追いかけ始めたが、その内に柵を飛び越えて終わりの見えない壁に突き当たった。
小鳥はこの向こうへ飛んでいったのだろうか、そう考えてワクワクしはじめる。
ちょっと工夫すれば登れるわ、と周囲を確認してからAは一旦ハウスへ戻り、皆が眠りにつくのを待った。
ハウスを抜け出すのも、Aには簡単なことだった。
月の明かりと、自分の記憶を頼りに壁までたどりつき、塀の上に立った。
｢これは･･･｣
目の前に広がった光景に、Aは息を飲む。
塀の下には、月明かりでさえも飲み込む深い闇が続いている。
どこを見ても塀の下には崖しか無かった。
なぜ？
明らかに隔離されている。
なぜ？
私達を守るため･･･？
何から？
｢A｣
名前を呼ばれてハッとする。
Aが振り返ると、そこにイザベラが立っていた。
｢ママ･･･？｣
どうして私がここにいることを？この崖は何？
聞きたいことがたくさんあったが、いまいち思考が追いつかない。
｢全て教えてあげるわ。降りてらっしゃい｣
そうしてAは真実を知った。
話を聞けば聞くほど、冷静になるのが分かるのは、きっと心のどこかでハウスでの生活に疑問を持っていたからだ。
首のマイナンバー、毎日のテスト、真っ白な制服。
越えてはいけない柵と、外から届かない手紙。
｢あなたは賢いから、選ばせてあげる。出荷か、ママになることを目指すか｣
いつも通りの微笑みを浮かべて、イザベラは問うた。
｢･･･生きたい｣
9歳のAには重すぎる決断をして、それから何事もなかったかのようにハウスでの日々を過ごした。
今までと変わらない振る舞いでハウスの生活をこなし、ベッドの中で涙を殺した。
それでも、誰かが出荷された夜には涙が溢れ出した。
それは、いつになっても慣れないことだった。
私もいつか出荷される。
でもそれは、終わりではない。
明日がある。
それでも、その明日は今までよりキラキラと楽しくは無いだろう。
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おん - もうやめましたか…？ (2020年8月10日 14時) (
レス) id: 79df10e130 (このIDを非表示/違反報告)
レンリ - 戻って来て下さい！ (2020年8月9日 9時) (レス) id: cff600fdbd (このIDを非表示/違反報告)
奈津子(プロフ) - 更新お願いします！ (2020年5月10日 0時) (レス) id: 55bc886d22 (このIDを非表示/違反報告)
沙綾 - 新刊発売されてま〜す。続き楽しみにしてます。 (2019年12月14日 23時) (携帯から) (レス) id: cbd580bb22 (このIDを非表示/違反報告)
しらたまコ(プロフ) - もちもち桜餅さん» お返事遅くなってすみません(><)ちょうど再会編に手を出していたので、書き終わってからお返事しようと思っていました！無事に円満な再会を書けたので安心して読んでください(><) (2019年6月21日 1時) (レス) id: 579bce1089 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しらたまコ | 作成日時：2019年5月24日 1時
