案じる行先 ページ13
.
クローネと鬼ごっこをした日の夜、この後の作戦のために集まった図書館でノーマンが口を開いた。
｢もしかしたらAは、
｢は？｣
｢レイ言ってたでしょ？Aとコニーの出荷の期間が短すぎる。Aはまだ時期じゃないはず、って｣
エマも昼間のクローネの言葉を思い出す。
｢でも、条件を満たした12歳の女子って言ってた。Aは私達と同じ11歳だよ？｣
｢もしAの出荷が特例なら、その話もアリかもな。特例で年齢を繰り上げたとか･･･｣
｢でしょ｣
｢でもそうなら、あいつは裏切り者ってことになるぞ｣
レイの言葉に2人が黙る。
裏切り者。
真実を知っていて、誰にも教えず、自分だけが生き残る道を選んだ。
レイの言いたいことまで分かってしまって、エマは何も言い返せない。
｢僕はそれでもいい。Aがどこかで生きてくれてる方がずっといい｣
毎晩のように見るのは、変わり果てたAの胸元に咲く1輪の花の夢。
生きている可能性があるなら、ノーマンはそれが何でもどうでもよかった。
｢さぁ、僕達のやるべき事を話そう｣
｢本当に行くの？相手あのシスターだよ？｣
ギルダが不安そうにエマの肩を掴む。
昼間、居合わせていないレイが行くのは都合が悪いのでノーマンとエマに任せた。
クローネの部屋へ向かう2人を見送って、部屋に戻り本を読んでいるとイザベラがやって来た。
その手にある箱に、レイの口角が上がる。
｢届いたわ。頼まれていたご褒美よ｣
最後の報酬に頼んだインスタントカメラ。
これでパーツが揃った。
｢ありがとう、ママ｣
試し撮りを渡してイザベラが出て行くのを見送ると、カメラを睨みながら考える。
｢A･･･｣
本当に生きてるのか？
｢私知ってるから、大丈夫。明日みんなと別れてからのことも｣
あの時のあの言葉は、そういう意味だったのか？
さっき言った、裏切り者は本心じゃない。
1人で秘密を抱えて、出荷を見送ってきたレイもAの葛藤を理解出来る。
だから、許せなかった。
Aの事情に気づくことの出来なかった自分が。
｢ごめんな、A･･･｣
約束は守ってやれない。
全員なんて、やっぱり連れていけないんだ。
20190607
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 234人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
おん - もうやめましたか…？ (2020年8月10日 14時) (
レス) id: 79df10e130 (このIDを非表示/違反報告)
レンリ - 戻って来て下さい！ (2020年8月9日 9時) (レス) id: cff600fdbd (このIDを非表示/違反報告)
奈津子(プロフ) - 更新お願いします！ (2020年5月10日 0時) (レス) id: 55bc886d22 (このIDを非表示/違反報告)
沙綾 - 新刊発売されてま〜す。続き楽しみにしてます。 (2019年12月14日 23時) (携帯から) (レス) id: cbd580bb22 (このIDを非表示/違反報告)
しらたまコ(プロフ) - もちもち桜餅さん» お返事遅くなってすみません(><)ちょうど再会編に手を出していたので、書き終わってからお返事しようと思っていました！無事に円満な再会を書けたので安心して読んでください(><) (2019年6月21日 1時) (レス) id: 579bce1089 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：しらたまコ | 作成日時：2019年5月24日 1時
