生まれてきてくれてありがとう【ワンパンマン】

今はむかし ページ1

私は、いじめや仲間外れが嫌いだ。一人で本を読んでいる子がいれば声を掛けたし、泣いている子がいれば助けてあげた。そのときはクラスでも中心にいる方だったから、誰も私がやることにケチをつけなかった。


クラスに、暗くていじめられている子がいた。それだけだったら、もしかしたらいじめられることはなかったのかもしれない。


「ヒーローより怪人のがかっこいいよ！」


これだ。これが原因で疎ましがられるようになったのだ。当時の私は、ヒーローや怪人にさして興味がなかったので、みんなが彼を遠ざける理由がわからなかった。


「ねえ、私からみんなに言おうか？」


帰り道、私は一緒に帰ろうと誘ってくれた子に断りを入れ、彼に話しかけた。


「え？何が」

「だっておかしいじゃん。ガロウくんが怪人が好きなだけなんでしょ？それだけなのに、ガロウくんだけ酷いこと言われてる。絶対変だよ。私が明日言ってあげるよ」


これでガロウくんは救われると思った。ありがとうってお礼を言われて、私はまた誰かを笑顔にできるんだって。

でも、彼は暫く考えた後、首を振った。


「いいよ、別に」

「え………」

「君さ、今はクラスの中心にいられてるけど、僕に構ったら仲間外れにされるよ」


そのとき、私は彼が強がってるんだと思い込んでいた。


翌日、まだ彼が登校していないときに壇上に立ってみんなに訴えた。みんなの顔はどうなっていたっけ。目は？口は？何を言われたんだっけ？

一つだけわかるのは、みんなが私をいじめるようになったってことだけ。もちろん小学生だったから軽いものばかりだが。上履きがなくなっていたり、ノートがビリビリに破られていたり。しかし、そんな経験をしたこともされるだろうと思ったこともないので、ダメージは大きかった。


誰も使わなくなった公園で、ブランコに座りながら泣いた。誰でもいいから話したかった。くだらないことを、どうでもいいことを。誰かと共有して、笑いたくなった。


「だから僕言ったのに」

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