【d!】推しとわたしとお隣さん。【zm】 (ページ4)

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踏み出す勇気ページ4

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　椎菜さんのお隣に越してきて早数週間。

　椎菜さんとは、たまにマンションのエントランスやエレベーターで顔を合わせた時に挨拶する程度の仲で、所詮お隣さん止まりのまま。

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「あ、どうも〜。椎菜さん、お仕事ですか？」

「……はい」

「はえ〜、頑張って下さい」

「どうも、」

──

　挨拶ついでに軽く世間話でも、と少しでも会話を続けようと試みるも、毎度この有様。まるで「これ以上話しかけないでくれ」「踏み込むな」と言わんばかりの空気感。

　はじめの挨拶での愛想の良さはいずこ。あの時、なにか失礼な事をしてしまっただろうかと疑う程、あれ以降は全くの無愛想…というかあからさまに避けられている。あまりに素っ気無い態度を取られ続け、流石の俺も若干傷心中。

「……って感じなんよな〜。俺、どうすればいいん大先生」

「うーん、難しいなあ」

「俺、完全に嫌われとるよな〜〜」

　撮影終わり、通話越しの大先生に話を聞いてもらいながらPCデスクに項垂れ、落胆する。

　何がいけなかったんだろうか。俺の何が彼女をそうさせているのか、心当たりが無さ過ぎて対策のしようもない。

「そこで諦めちゃあ男が廃るってもんよ」

「いやあ、そうなんやけどな〜…」

　何だかそれっぽい事をいう大先生に納得しつつも、あそこまで素っ気無い椎菜さんにこれ以上押せ押せでいっても嫌われていく一方なんじゃないかと首を捻らせる。
　だからと言って、自分は辛抱強いタイプではないので、このままただのお隣さん止まりでいるのが嫌で直ぐにでも関係を進展させたいのもまた事実。

「らしくないね〜、ゾムさん」

「んな事言ったってよ〜、」

「まだ嫌われてると決まった訳じゃあるまい、もう少し頑張ってみてもええんちゃうか？」

　いつもはおちゃらけた大先生なりのアドバイスを受け、それでも尚、うーんと唸り続ける俺。

　お隣さん、ただそれだけでまだ始まってもいない関係性。あと一歩、勇気を踏み出せばその先に進めるかも知れないのに、そのあと一歩を踏み出すのに時間がかかる。

　はあ〜〜〜、俺ってこんな女々しかったっけ……

「当たって砕けたらそん時や。そしたら俺らが笑って励ましたるって」

「……もう少し頑張ってみるわ、ありがとなあ大先生」

「あたぼうよ！頑張れゾムぅ」

　軽快な音を立て、通話が切れるとよし、と気合を入れ直した。

　目指せ、脱・お隣さん。

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