【番外編】彼方の銀世界できみと眠る【鶴丸国永】

きみに一生分の驚きを3 ページ4

「我らは選ぶ主を間違えたようですな」





あろうことか一期は恋人である彼女に刃を向け、見習いの女の味方をした。





「本気で言っているのか」





腸が煮えくり返るような思いだった。

彼女の後姿は震えていてとても小さく見えた。何より彼女の瞳に浮かぶ涙を見て、俺は耐え切れなくなってしまった。




俺はそんな顔をさせるために彼女から手を引いたわけじゃない。


一期なら幸せにしてくれるだろうと思っていたからだ。


なのにどうして彼女を泣かせている？どうして彼女を悲しませている？






「見損なったぞ一期一振」




一期だけじゃない。その場で見習い側に付いている全員だ。






五年も彼女の元で過ごしてきて一体何を学んだんだ。


決して事務的な付き合いじゃなかった。彼女は俺たち全員にしっかり向き合い愛情を注いでくれただろう。



「それを、裏切るのか」




ぽつり、鶴丸が呟いた声は誰に拾われることもなく喧騒にかき消された。




「鶴丸、」



「大丈夫だ。俺が付いている」



震える声で俺を見上げた彼女を安心させるように微笑む。

この場には彼女の敵しかいない。俺しか彼女を護ることはできなかった。










「すまない、主」



「どうして鶴丸が謝るの」



仲間に裏切られて苦しいのは自分のはずだ。



なのに彼女は一期の刀身を握り負傷した俺の手入れを優先してくれた。


「鶴丸が傷付いていたら、私も余計に辛いの」とぎこちなく笑う彼女の表情が今も脳裏に浮かぶ。



どうしてこんなに優しい彼女を裏切ることができるのか、俺には不思議で仕方なかった。

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