【番外編】彼方の銀世界できみと眠る【鶴丸国永】

ほろ苦いオランジェット2 ページ29

そんな朔夜くんから本丸に来ないかと声をかけられたのが数日前のこと。



「Aさん、あの。うちの本丸に来ませんか」



「え」



「……急でしたよね、すみません」



「ううん、大丈夫」



でも、なぜだろう。



前任の私なんかが彼の本丸に行っても良いのだろうか。今更本丸を出て行った私が。



行くこと自体は別に良かった。



もう振り切っていたし彼らに対して怒ってもいなかったから。

でも彼らが私の訪問を良しとするのか、それだけが気がかりだった。




「あの、うちの刀剣男士の許可はもらっているので」



「え」



「むしろ、みんな来てほしいと言っていました」



「そう、なの」



「だからもし良ければ」





だめ、ですか？と眉を下げて笑った彼に「い、イキマス……」と思わず返事をしてしまったのが事の始まり。


あれよあれよという間に事は進み、気付けば本丸訪問当日となっていた。




おかしい、時の進みが早すぎる。


この前返事をしたはずなのにもうこんなに時間が経ったなんて。


昨日なんて謎の緊張でろくに寝られなかった。




いつも寝ている時間なのに目がばっちり冴えてしまってすることもなく厨に一人突っ立っているのを夕餉の残りをつまみ食いしに来た御手杵に見つかり絶叫されたのは記憶に新しい。

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