もしもね。 (ページ9)

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北斗の保育園までは徒歩5分というそこまで遠くない距離。

そう、『徒歩』で5分。

最近この町は改めてバリアフリー仕様に工事されたので以前よりかは車椅子での移動も楽になったが、それでも車椅子だと徒歩に比べると多少は時間がかかる。

きっと気持ちの問題もあるのだろう、いつもより車椅子を漕ぐのに力がいる。

なんとか北斗の保育園に到着した。

大「…すいません、北斗のお迎えに来ました。兄の大我です…。」

保育士「あら、こんにちはー！北斗くーん、お兄さんがお迎えに来てくれたよ〜！」

北「あっ！たいにぃ！」

保育士さんと北斗の声で、たくさんの目が俺に注目する。

あぁ、俺の苦手な目だ…。

北「たいにぃ！お迎えに来てくれたの？」

大「あぁ、うん…。北斗、帰ろ？」

北「あ、まってよ、たいちゃん！」

一刻も早くこの場を立ち去りたくて、北斗が着いてくるかも確認せず車椅子を漕ぎ始める。

すると、一番聞きたくない会話が聞こえてきた。

子供A「なぁ北斗！なんでお前のにぃちゃん歩けないの？」

子供B「そうだよ！それにあれ、くるまいすって言うんでしょ？ママが教えてくれたよ。」

子供A「くるまいす？何それー！歩けないなんて、変なのー！」

子供B「変なのー！」

どうやら同じクラスの子が、北斗に向かって言ってるらしい。

そんな状況に立たせてしまった北斗に申し訳なくて、俺自身も早くこの場から立ち去りたくて、

大「…北斗！いこっ、ね？」

と北斗の手を引こうとした。