きっと、愛は不公平。【LDH】 (ページ4)

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掛け替えのない。【青山陸】ページ4

今まで、恋愛に溺れられる人って幸せだなぁと思っていた。いや、嘘かもしれない。馬鹿馬鹿しいって蔑んでいたのかも。他人を好きになれたとしても、私はどう足掻いたって「溺れる」ということはできなかった。やっぱり自分が大事で。周りが見えなくなるくらいのめり込むなんていうことは恐怖でしかなかった。

それが今では、彼がお腹が空いたとポツリと呟けば冷蔵庫にある余り物でなんとか美味しい物を作ろうと考え、眠いと言い出す前には寝室のエアコンのスイッチを入れて加湿器まで回しておく。私の頭の中は完全に彼中心なのだ。

それでも、彼のことを何でも知りたいとは思わなかった。彼の為に何でもしてあげたい。あげたいというか、したいだけ。私が勝手に。けど束縛はしたくない。…自分で何を言っているのかわからなくなってきたな。あれ、このベーコン賞味期限いつまでだっけ。

別に考えなくても良いことにひたすら頭を働かせていたら彼が帰ってきた。

あれ？帰ってきた？
帰るって連絡まだ来てなかったのに。

リビングに入ってきて、扉が閉まったままの冷蔵庫の前でベーコンを片手に持っていた私と目が合うが、ただいまも言わずに暖房のスイッチを付けてシャワーを浴びに行ってしまった。

怒ってる。
滅多に怒らない陸が、珍しく。

仕事で何かあったのだろうか。思うように声が出なかった？だから自分に腹が立ってる？それか、友人関係で何かあった？いや、それとも…私？

知りたいことが次々に溢れてくるけど、どうしようもない。どうしようもないけど、もし原因が私ならどうしよう。取り敢えず一旦持ってる物を冷蔵庫に仕舞おう。

間も無くして、濡れた髪にタオルをかけた彼がリビングに戻ってきた。まだキッチンに立っていた私に「入ってくれば」と冷たく言い放った。こんなに怒っている姿なんか見たことがなくて、わからなくて、「うん」とだけ返した。