第170話 未来 ページ34
「エミリア、彼は劉。父さんが普段からお世話になっている方だ。挨拶しなさい」
「はじめまして」
袖口に入れた手を少しだけ上にあげて、会釈した彼。
英国には珍しい中華服に、背が高く綺麗な黒髪。
そんな彼の目は閉じられているのに、不思議と目が合った気がした。その時、優しく微笑んでくれた劉さんに、私は恋をした。
自覚してからずっと一途に想い続けて、お父様が阿片窟というところに行く時は必ずついて行った。
劉さんの後ろ姿を見つけて、お父様が声をかけるよりも先にその広い背中に抱きつくの。
驚いて肩をびくつかせる劉さんが可愛くて、可笑しくて。
「えへへ、びっくりした?」
笑ってそう聞くと、
「そうだね、驚いたよ」
初めて会った時みたいに微笑んでそう言うの。
そんな私の恋心に気づいたお父様がある日こう言った。
「劉の愛人になりたいならこれを使いなさい」
そう言って渡されたのは小瓶。
中にはピンク色の液体。
それが何なのか、私はすぐに理解した。
正直こういうやり方は好きじゃない。
でも……
劉さんが私の名前を読んで、
私だけを見て、
私だけを求めてくれるのなら、
「お父様」
「なんだ?」
「私、愛人は嫌よ?本物の恋人同士になりたいの」
なんだってできる……____________
そう思ってた、はずだったのに。
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お父様に思い切り頬を殴られて、その勢いに負けて私は床に倒れ込んだ。
「失敗しただとッ……?ふざけるな!!」
「ご、ごめんなさいお父様……!でも私っ、」
「わざわざ媚 薬まで取り寄せたというのに、あの男には効かなかったか……っ」
最初から劉さんのことを自分の手中に収めるのが目的で、私はそれに利用されただけ。
その現実が受け入れられなくて。
痛む頬に手を当てながら立ち上がろうとすると、お父様は私を見下して言った。
「何をしている、この役立たずがっ……とっとと消えろ」
ねぇ劉さん。
もし、貴方が私のことを覚えていてくれたら。
媚 薬に溺れて、私のことを抱いてくれていたら。
未来は変わっていたのに。
貴方が大切に囲っている子が、傷つくことなんてなかったのに。
貴方が私に会う度にいつも微笑んでいたのは、
私のことを、“覚えていなかったから”なんだよね。
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古畑のねこ(プロフ) - oemi200174さん» こちらこそ最後までお読み下さり、本当にありがとうございました……!現在「溺愛、死」のその後のお話を執筆しておりますので、良ければ是非読んで頂けると嬉しいです……! (2022年4月18日 15時) (レス) id: f94598afd5 (このIDを非表示/違反報告)
oemi200174(プロフ) - 最後までありがとうございました!素敵な作品に出会えてよかったです!これからも応援してます!!!! (2022年3月20日 0時) (レス) @page50 id: bdeac365d5 (このIDを非表示/違反報告)
古畑のねこ(プロフ) - しののしさん» ありがとうございます……そう言って頂けてすごく嬉しいです。これからも頑張ります! (2022年1月8日 23時) (レス) id: f94598afd5 (このIDを非表示/違反報告)
しののし - 最高です。更新楽しみに待ってます。 (2022年1月1日 12時) (レス) @page26 id: 969dc0e871 (このIDを非表示/違反報告)
古畑のねこ(プロフ) - アリアさん» ありがとうございます!素敵な最終回になるよう、頑張ります! (2021年12月12日 0時) (レス) id: f94598afd5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:古畑のねこ | 作成日時:2021年9月25日 4時