第167話 特許 ページ31
それからしばらくたったある日。
私は劉さんの留守の間に、お屋敷を抜け出してとある酒場に来ていた。
酒場の名前は「ムーンエンド」
そこはかつて、レッドアイスというドラッグの件で関わりのあった酒場だった。
「準備中に誰かと思ったら、嬢ちゃんだったとはな」
「お忙しい中ごめんなさい……」
「いやいいんだ。嬢ちゃんには世話になったからな。俺で良ければ力になるぜ!」
「ふふっ、ありがとうございます!」
私はオーナーさんに脅迫状を渡して、前に劉さんから聞いた青龍の話をした。
しばらく脅迫状を見ていたオーナーさんが、何かを思い出すよう宙を見上げた。
「青龍の塔……って、あれじゃないか?」
「知ってるんですか?」
「イーストエンドには東西南北に位置する古い四つの塔がある。確かその一つが青龍の塔って名前だったな」
「東西南北ってことは、塔は四つあるんですか?」
「あぁ、それぞれ名前があってな。西は白虎の塔、南は朱雀の塔、北は玄武の塔……それから、東には青龍の塔」
やっと得た手掛かり。
でも、イーストエンドに塔があるなんてシエルも劉さんも教えてはくれなかった。
「あの、その塔って有名なんですか?」
「いや、それぞれ奥地にあって普段は人は立ち寄らない。何より古いしな。それに昔はドラッグの取引場として使われてたって聞くから、表の人間が立ち寄ることはまずないな」
「そうですか……シエルはその塔のこと知らないのかな」
「そのシエルってのが誰かは知らねぇが、イーストエンドのことは、イーストエンドに住んでる人間が一番詳しいと思うぞ」
オーナーさんにそう言われ、私は糸が切れたように深く息を吐いてカウンターテーブルにおでこを当てた。
ゴンッと大きな音を立ててしまい、オーナーさんが心配そうに声をかけてくれた。
ドラッグ、か……。
また劉さん絡みだ。
いや、そもそもこの脅迫状は劉さん宛てのものだから、劉さん絡みには違いないけど。
青龍の塔の“娘”……ってことは、女性だよね。
「……オーナーさん」
「ん?」
「どうやったら、私だけのものになってくれるんでしょう」
「……」
「野蛮だなんだって言われてたとしても、私だけがあの人の優しさを知ってればそれでいいのに」
「奪っちまえばいい」
「……え?」
顔を上げるとオーナーさんは穏やかに笑っている。
「他人から何かを奪うのは、アンタらマフィアの“専売特許”だろ?」
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古畑のねこ(プロフ) - oemi200174さん» こちらこそ最後までお読み下さり、本当にありがとうございました……!現在「溺愛、死」のその後のお話を執筆しておりますので、良ければ是非読んで頂けると嬉しいです……! (2022年4月18日 15時) (レス) id: f94598afd5 (このIDを非表示/違反報告)
oemi200174(プロフ) - 最後までありがとうございました!素敵な作品に出会えてよかったです!これからも応援してます!!!! (2022年3月20日 0時) (レス) @page50 id: bdeac365d5 (このIDを非表示/違反報告)
古畑のねこ(プロフ) - しののしさん» ありがとうございます……そう言って頂けてすごく嬉しいです。これからも頑張ります! (2022年1月8日 23時) (レス) id: f94598afd5 (このIDを非表示/違反報告)
しののし - 最高です。更新楽しみに待ってます。 (2022年1月1日 12時) (レス) @page26 id: 969dc0e871 (このIDを非表示/違反報告)
古畑のねこ(プロフ) - アリアさん» ありがとうございます!素敵な最終回になるよう、頑張ります! (2021年12月12日 0時) (レス) id: f94598afd5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:古畑のねこ | 作成日時:2021年9月25日 4時