第154話 意地 ページ17
セバスチャンさんにお礼を告げてから、私はお屋敷の廊下を走った。
今すぐ劉さんに会いたい____________。
「名前様!?お戻りになられたんですね……!」
「っ、ご迷惑かけてすみません……!あの、劉さんは戻ってきていますか?」
「寝室にいらっしゃるかと……あ!名前様!廊下は走ってはいけません!」
使用人さんの注意の言葉を最後まで立ち止まって聞くことが出来ず、寝室に向かって走り出していた。気持ちばかりが焦って足がもつれて転びそうになる。床に一瞬手をついて、また走り出した。
劉さんに会って、一番最初に言うことは決めていた。
「劉さんっ……!」
寝室の扉を勢い良く開け放つ。
窓の外を眺めていた劉さんは驚いた顔をして振り返った。
「……名前?」
劉さんの顔を見た途端、心臓がドクンと脈打つ。
息を飲んで、思い切り劉さんに抱きついた。
「劉さんっ……ごめんなさい……!」
「名前……」
「大嫌いなんて、酷いこと言って……劉さんのこと押し退けちゃって……ごめんなさいっ……」
「我の方こそごめんね。無事で良かったよ」
劉さんは左手で私の腰に手を回し、右手で優しく私の頭を撫でる。次第に右手が下がり、頬を撫でられた私は反射的に劉さんの顔を見上げた。
ほんの少し眉が下がっていて、寂しそうな顔をしている。
その顔は、劉さんがいない間に私が初めて煙管を手にした時と同じものだった。
「怖がらせちゃったよね」
その言葉に私は必死に首を横に振る。
「名前って意地っ張りなところあるよね〜、まぁそこも可愛いんだけど」
「セバスチャンさんから聞きました。劉さんから私のことを探すようにお願いしたって」
「うん。本当は我も行きたかったんだけど、“手ぶら”じゃダメかなって」
「手ぶら……?」
すると劉さんはにっこりと笑って、自分の左手を私の目の前にかざして見せた。
「!」
その左手の人差し指には銀色に輝く指輪がはめられている。
「セバスチャンさんが言ってた探しものって……」
「もう二度とはずれないように、名前がおまじないかけてよ」
私は劉さんの左手をとって、指輪にそっとキスを落とした。それを見た劉さんは満足そうに笑うと、私を抱きしめる。回された腕は少しだけ力強いものだった。
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古畑のねこ(プロフ) - oemi200174さん» こちらこそ最後までお読み下さり、本当にありがとうございました……!現在「溺愛、死」のその後のお話を執筆しておりますので、良ければ是非読んで頂けると嬉しいです……! (2022年4月18日 15時) (レス) id: f94598afd5 (このIDを非表示/違反報告)
oemi200174(プロフ) - 最後までありがとうございました!素敵な作品に出会えてよかったです!これからも応援してます!!!! (2022年3月20日 0時) (レス) @page50 id: bdeac365d5 (このIDを非表示/違反報告)
古畑のねこ(プロフ) - しののしさん» ありがとうございます……そう言って頂けてすごく嬉しいです。これからも頑張ります! (2022年1月8日 23時) (レス) id: f94598afd5 (このIDを非表示/違反報告)
しののし - 最高です。更新楽しみに待ってます。 (2022年1月1日 12時) (レス) @page26 id: 969dc0e871 (このIDを非表示/違反報告)
古畑のねこ(プロフ) - アリアさん» ありがとうございます!素敵な最終回になるよう、頑張ります! (2021年12月12日 0時) (レス) id: f94598afd5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:古畑のねこ | 作成日時:2021年9月25日 4時