第153話 否定 ページ16
｢いい！？ちゃんと屋敷に戻んのよ！セバスチャンのところ行ったら許さないから！｣
｢わ、分かったってば……｣
日が沈み始めた頃、二人に別れを告げて一人で劉さんのお屋敷へと戻っていた。
俯きながら歩きつつ、考えていることは劉さんのことばかり。まずは謝って、それから一昨日何があったのかちゃんと冷静になって聞こう……。
そうすれば、きっと……と決意して前を見ると少し遠くに黒の燕尾服を着た人物が見えた。
｢……セバスチャンさん？｣
｢名前様、探しましたよ｣
｢なんでセバスチャンさんが……｣
｢大事なお客様からのお申し付けでしたので｣
セバスチャンさんはにこりと笑って言う。
｢さぁ、お屋敷までお送り致しますので馬車にお乗り下さい｣
｢あ、あの……劉さんは？｣
｢劉様は別のご用事がありましたので、そちらを片付けてからお屋敷に戻られるかと思います｣
｢用事？｣
セバスチャンさんは馬車の扉を開けて、こちらにそっと手を差し伸べた。
｢お探しものがあるそうですよ｣
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お屋敷までの道のりはあっという間で、気づいたら既に馬車から降ろされていた。
少し不安で、ため息をつくとセバスチャンさんの指先が私の頬に触れた。
｢随分心配なされていましたよ｣
｢……｣
｢名前様？｣
｢ダメなのかな、一緒にいたいって気持ちだけじゃ……｣
私の口から自然と零れた言葉を、セバスチャンさんが掬いあげる。
｢私なら、忘れさせてあげられますよ｣
熱くて、甘美で、魅力的な言葉。
でも気づいてる。
私がいま、本当に欲しい言葉を言えるのは……何もかもを忘れさせてくれるのは……。
セバスチャンさんの言葉を否定するように私は首を振った。
｢忘れられるはずないです……だって……私｣
セバスチャンさんの手をそっと離して、彼を見上げた。
｢劉さんのこと、好きなんだと思います。だから今日のことを無かったことにはしたくないんです｣
私の言葉を黙って聞いてくれたセバスチャンさんは、少しだけ呆れたように笑った。
｢そういうお言葉は私にではなく、劉様に言って差し上げてくださいね｣
｢ご、ごめんなさい……！｣
最後にセバスチャンさんを見上げると、満足そうに、けれどどこか悲しそうに笑っていた。
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古畑のねこ(プロフ) - oemi200174さん» こちらこそ最後までお読み下さり、本当にありがとうございました……！現在｢溺愛、死｣のその後のお話を執筆しておりますので、良ければ是非読んで頂けると嬉しいです……！ (2022年4月18日 15時) (
レス) id: f94598afd5 (このIDを非表示/違反報告)
oemi200174(プロフ) - 最後までありがとうございました！素敵な作品に出会えてよかったです！これからも応援してます！！！！ (2022年3月20日 0時) (レス) @page50 id: bdeac365d5 (このIDを非表示/違反報告)
古畑のねこ(プロフ) - しののしさん» ありがとうございます……そう言って頂けてすごく嬉しいです。これからも頑張ります！ (2022年1月8日 23時) (レス) id: f94598afd5 (このIDを非表示/違反報告)
しののし - 最高です。更新楽しみに待ってます。 (2022年1月1日 12時) (レス) @page26 id: 969dc0e871 (このIDを非表示/違反報告)
古畑のねこ(プロフ) - アリアさん» ありがとうございます！素敵な最終回になるよう、頑張ります！ (2021年12月12日 0時) (レス) id: f94598afd5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：古畑のねこ | 作成日時：2021年9月25日 4時
