溺愛、死 2【黒執事】

第64話 全部 ページ19

｢わぁ！劉さん雪ですよ、雪！｣


｢うぅ、寒いよ名前〜｣



さっきの甘い雰囲気が無かったかのように、私は劉さんの腕を引いてバルコニーに出た。

寒そうに服の袖口に手を入れる劉さん。

私は手で雪を集めてそれを劉さんに投げる。



｢ぅわぁ、冷たいよ〜｣


｢ふふっ、隙ありです！｣


｢我を敵に回したら厄介だよ｣


｢え、きゃッ……！劉さん、冷たいですよ！｣


｢責任持って我を暖めてね｣



雪を払うことなく正面から私に抱きついてくる劉さん。振りほどこうとするが全然ビクともしない。

私は観念して、劉さんの腰に腕を回した。



｢……名前？｣



急に静かになった私に、心配そうに声をかける。



｢劉さん｣


｢なんだい？｣


｢私は、怖くないですよ、劉さんのこと｣


｢……｣



おはようと声をかけられた時、どこか不安そうな顔をしていたことに何となく気づいていた。

確かに昨日は少し強引だった時もあったけど、でも……



｢私は、劉さんが大好きです｣



劉さんの髪も、目も、腕も、手も

甘い香りも、飄々とした態度も、雰囲気も、声も



｢全部大好きです。昨日は劉さんに遮られたけど、今度こそ言わせてください｣



劉さんは閉じていた目を開き、私の頬に冷たくなった手を添えた。

私はその劉さんの手に自分の手を添える。
手に伝わる雪と、指輪のひんやりとした冷たさ。



｢誰かを殺 すことが劉さんの為になるなら、私は喜んでその道に進みます｣


｢……｣



沈黙と劉さんの澄んだ目。



｢あ、あの、もし迷惑なら、今のことも昨日のことも、忘れてくださいっ……｣


｢嫌だね！｣


｢ら、劉さん！？｣



突然劉さんに押し倒され、劉さんと私は雪が薄らと積もったバルコニーの床に倒れ込む。

目の前には幸せそうにニコニコと笑う劉さん。



｢我もだよ、名前。我も名前の全部が好き。特に好きなのは“それ”さ｣


｢それ？｣


｢その“我が大好き”って気持ちだよ。我の思い違いではないだろう？｣


｢っ、はい……｣


｢もちろん昨日の名前も、絶対忘れないよ｣



それは忘れてください！と否定する私が、





行為中、劉さんに手を伸ばし





｢もっと……もっと、劉さんで、いっぱいにしてくださいッ……｣





なんてことを言っていたと知るのはこの人だけ。









初めての職業体験編fin.

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