罪の名前 Ⅱ (ページ5)

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｢今日はここまでにしよっか｣

その曲なら焦ることもなく出来そうだしね。

と、言うと

いつもは帰る準備を始める作間くんが今日はその場から動かなかった。

体調でも悪いのかな、と顔を少し伺ってみるもののこちらに気づいている様子はない。

どうしたのだろう。

君らしくない。

彼の目の前で数回手を振ってみると

我に返ったかのように、うわっと少しびっくりする彼。

あまり表情が変わらない子だから尚更珍しくて、自分には関係ないことなのに、

どうしたの?と聞いてしまった。

｢…なんでもないです｣

なんでもないから______

その顔がなんでもないようには見えなかったけれど私は干渉することが出来ずにいた。

また、同じ過ちを繰り返すのか。

君はどこか似てるんだ。

私の母にも蒼弥にも。

だから君を見ているとほっとするし、同時に苦しくもなる。
逃げ出したくなるし、音楽というものをどう思っているのかを聞きたくなる。

｢何かあったら言ってね｣

いつでも相談乗るよ、なんて昔蒼弥に言ったことと同じことを言ってしまう。

それで彼は傷ついたのに。

私があの時無理矢理にでも止めさせるべきだった。

音楽に取り憑かれた人が結局どうなるか私はこの目で間近で見てきたはずなのに。

私は色んな人を不幸にしてしまう疫病なのに。

あぁ、今日はなんだか少し疲れちゃったなぁ。