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「りょーちゃんいますか?」
そういうと、りょーちゃんのお母さんは少しびっくりした顔をして、あのこ言ってなかったのねとぼそっと呟いた。
何を言ってなかった?
私に?
りょーちゃんはいつも私に1番に相談してくれたはずだよ。
知らないことなんて無いと思ってたのに。
どんどん私から離れていく彼が。
言いようもなく怖くなった。
「Aちゃん上がっていって。
久しぶりにゆっくり話もしたいし、うちで夕飯食べていったら?」
「でも迷惑じゃ…?」
「迷惑じゃないわ。私も娘がいるみたいで楽しいし。
お母さんには私から連絡しておくから」
そう言われると、断ることもできないので頷く。
久しぶりに会ったおばさんは、前より少し笑い皺がふえたような気がした。
でも30代前半と言われてもいいくらいにまだ若々しく綺麗な人だった。
「なにから、話そうかしらね」
暖かい紅茶を入れてくれて、手作りのお菓子も食べなさいと渡してくれる。
私の好きなメレンゲクッキー。
「Aちゃん覚えてる?
幼稚園の時、ずっと涼のこと守ってくれてたの」
あの子昔は、静かであんまり笑わない子だったじゃない。
それで耳も聞こえないし、聞こえないせいで話すこともできない。
話す練習をさせてみたこともあったけれど、やっぱり聴覚って凄いのよね。全然発音もできないから、私がやめさせたの。あの子にとっては、これが辛いことなんだって分かっていたから。
そんなこと初めて聞いた。
「正直、私昔のことあまり覚えていないんです。
りょーちゃんを守ってたことよくお母さんから聞くんですけど、全然覚えていなくて。覚えているのは2人で楽しく遊んできた時の記憶ばっかりで…」
そう、と少し安心したような声を出すおばさんをどう見たらいいかわからず困ったような顔になってしまう。
「本当はね、手術させようと思ってたの。」
「…えっと」
「補聴器したほうがいいって。私その当時ずっと耳が聞こえないことが不幸な事だと思ってたの。
でも、できなかった。Aちゃんが居てくれたから。ずっと守ってくれていたから。」
「でもね今、手術したいってあの子は今大きな病院にいる。」
しゅ、じゅつ?
「きっとなにか目標が決まったんだと思うの」
どうか、あの子を応援してあげて欲しいの。
そうやって頭を下げるりょーちゃんのお母さんが少し涙ぐんでいるのがわかる。
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ハル(プロフ) - 新作、!!!頑張ってください! (2019年8月19日 0時) (レス) id: a070df98c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひまわり | 作成日時:2019年8月19日 0時