ガーベラの花を II【刀剣乱舞】 (ページ16)

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60話シャボン玉ページ16

一期side

乱の可愛らしい要望に応えるべく厨に向かった

なぜ、厨だって？

それは私と初代の約束があるからだ

初代がいた頃、初代はよく短刀たちのために

シャボン玉を買ってきてくれた

初代がくれるシャボン玉は全然割れないんだよ

どこまでも空高く飛んでね、

凄いんだよ！

と弟たちは嬉しそうにいつも私にそう話していた

_________

初代の病状が日が経つにつれ悪くなっていく中、

ある日、私は初代に呼ばれた

最近の初代は部屋に私たちが入るのを良しとしなかった

恐らく弱る自分の姿を見せたくなかったのだろう

何事かと思い、襖に足の指を当ててしまい

思わず蹲ってしまうほど、慌てたんだ

今、思うとあれは恥ずかしいな

その様子を見た初代は笑いながらこう言ったのだ

「あのシャボン玉の秘密を特別に一期に教えよう。

わしが居なくなってた後も

あの子たちにあのシャボン玉を作ってあげてくれ」

と

流石の私もギョッとしましたな

普段、死を匂わせるようなことを

決して言わない方がそう言ったのだから

それと同時に悟りました、

初代はもう長くはないのだ、と

ならば最後の主命だと思い、

その意思を私が受け継ぐことにした

初代はどこか子供のような表情で自慢気に言った

このシャボン玉はね、

わしの父が教えてくれたものなんだ

なかなか割れないのが自慢でね

父は亡くなるまで決してわし以外に誰にも教えずにいたんだ

だから今、この世でこれを知ってるのはわしだけなんだ

だから、一期、おまえは特別だ

これは二人だけの約束だぞ」

______

主、いや初代、ようやく私は貴方との約束を守れますね

貴方の魔法は、死して尚

あの子たちの記憶に残っていますよ

"いいか、一期

シャボン玉は主に蒸発や重力に耐えられずに割れてしまうんだ

だから、それを防ぐためにな

砂糖を入れるんだ

でもな、入れ過ぎてもいけない

それに砂糖だけではない

わしのシャボン玉には、少しだが蜂蜜も入れるんだ

それがわしの魔法だ"

亡き初代の言葉を思い出しながら、

シャボン玉に加えていく

ふふ、乱たちは喜んでくれるかな

それとも驚くのだろうか

美桜なんて追いかけ回しそうだな

このシャボン玉を渡した時の

あの子たちの表情を思い浮かべると

穏やかな気持ちになる

さて、そろそろあの子たちのところへ戻ろう

あまり、待たせてはいけない

私は厨をあとにしたのだった