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「だっ……黙れえぇえ──！！ 」
剣城の痛々しい叫び声が、微かに、私達がいるベンチにも届いた。そうでもしなければ松風君にボールをぶつけられなかったのかもしれない。
だが松風君は倒れなかった。剣城の
「松風君、走れ！！ 」
神童さんも信助も、痛みで足が動いてない。走った先に味方がいないと分かっているのに走れと言うのは酷だろう。それに、動けば動く程万能坂のおもちゃになる。
でも、走ってボールを相手陣営に持ち込んでくれなきゃ、得点のチャンスすら無い。
「天馬！ 走って！ 」
葵ちゃんの声援とほぼ同時に、彼は危なげな足取りで走り出す。
相手のスライディングが松風君の足首を襲った。痛みに顔を顰めるが、倒れるのを必死に我慢してボールを前へと運ぶ。
「剣城！ ねえ、剣城ッ！！ 」
副審に怒られないギリギリの位置までコートに近づく。届かないとは思っても叫ばずにはいれなかった。近くで磯崎達のプレイを見ているならもうスパイクの細工には気づいている筈なのに、どうして、どうして無視するんだ。
「松風君が、サッカーできなくなっちゃうよ──！ 」
叫び過ぎて喉に電気が流れた様な痛みが走る。一瞬目を閉じたその刹那、殺気を感じた。
鋭利なそれに私は覚えがある。
「デスソード──」
その黒い剣は雷門ではなく、万能坂のゴールを貫いていた。電子得点板が動く。雷門に一点が入ったのだ。
『ゴォール！ な、何と剣城が今度は自らのオウンゴールを帳消しにする、同点ゴールだーーッ！！ 』
「うっそ……！ 剣城がフィフスセクターに逆らった！？ 」
「アイツ、前半の土壇場でやりやがった！ ハハハッ！ 」
水鳥さんが私に駆け寄り頭をガシガシと撫でてくる。雷門のベンチ陣営はまるで試合に勝ったみたいな喜び様だが、それを咎める人間はいなかった。
「剣城お前……サッカーを潰すんじゃなかったのか？ 」
「潰すさ。こんな腐ったサッカーは……俺がこの手でぶっ潰す！ 」
「いいぞ剣城ーー！！ 見直したぞ剣城ーー！！ 」
「……フン。さあ始めるぞ、よく見ておけ。これが本当のサッカーだ！ 」
一頻り喜び終わり、ベンチで選手達を迎える準備をしていると茜さんが円堂さんに尋ねる。
「……剣城君がこうなる事、もしかして監督は分かってて……？ 」
「いいや。俺はアイツを信じてただけさ。アイツのサッカーへの想いを」
心地よいそよ風が全員の頬を撫でた。
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やに(プロフ) - 杳覇さん» くらちゃんコメントありがとうございます(^^) 頑張りますー！ あと早速誤字やらかしているので、読み直し徹底して行きたいと思います恥 (2021年7月12日 10時) (
レス) id: 73f24c4202 (このIDを非表示/違反報告)
杳覇(プロフ) - よっしゃ新作きたーー！！！ あああ一話目から面白そう……！！ え、え、めっちゃ楽しみです……！！ 更新待ってます！！ あとその、「急な転向」って「急な転校」ではないでしょうか……！ (2021年7月12日 10時) (レス) id: 7468c0248e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：やに | 作成日時：2021年7月12日 10時
