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「優一兄さん、調子はどうだい? 」

 声の主は剣城京介。彼は足の療養の為に入院している兄・優一の見舞いに来ていた。

「いつも通りさ。それよりお前最近毎日来てくれるがサッカーの方はどうなんだ。楽しくやっているのか? 」
「……あぁ。それなりにね」

 真っ赤な嘘である。そしてそれを薄々優一は勘付いているらしい。

「それなりか。それなりにじゃ困るぞ。お前にはサッカーで日本一くらいにはなってもらわないとな」
「分かってる……」
「だから俺は」
「分かってる!! 」
「──」

 珍しく声を荒げた弟の顔を見て、優一は息を飲んだ。ごめん、と一言謝罪し、京介は続ける。

「今のサッカーは難しいんだ、色々……。兄さんの頃とは違うんだよ」
「……すまなかった、つい」

 口を滑らせた。普段なら考えもしない、酷い一言だった。もう何年もサッカーに触れられない日々が続く優一にとって、どれ程ショックな言葉だったかは想像に難しくない。だが、そうだとしても、ここまで言ってしまった以上京介も引くに引けなくなっている。

「……兄さん。俺はもう一度兄さんがサッカーをしている所が見たい。だから絶対に手術代を作ってみせるから」
「お前が気にする必要はないさ。大体この足を治すには海外の手術しかない。そんな大金普通の家庭ではとても……」

 どう言葉を結ぶか悩んでいると、廊下が騒がしくなった。これ幸いと優一は車椅子のブレーキを解除し、駆動輪を回して部屋の外へ顔を出した。

「君達、どうかしたのかい? 」
「あっ! さっきの人」

 京介はここにいない筈の人間の声に驚き、顔を顰めた。
 ──なんであいつらがここにいる。

「良かった、これ落とし物です」
「あぁ、サッカー雑誌を落としていたのか。態々届けてくれてありがとう」
「いいえ。あの、俺もこの本読んで特訓とかしてます! お兄さんもサッカーが好きなんですか? 」
「あぁ好きなんだ。とても。昔は世界だって目指していたんだよ」
「おーい天馬ァ! 」
「おや……お友達が呼んでいるみたいだな。君、天馬君って言うのかな? これからもサッカーの特訓頑張ってな」
「はい! 頑張ります! それじゃあ失礼します」




「おかしいな。もう見て回れる場所は無いぜ? 」
「剣城帰ったのかもしれませんね」
「はぁ。一瞬目を離したのがマズかったな」
「……典子ちゃんもいない」
「あ? ……あっ!? あいつどこ行ったんだ! 」
「うふふ、神隠し」
「もーー! 典子ちゃーん! 」

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やに(プロフ) - 杳覇さん» くらちゃんコメントありがとうございます(^^) 頑張りますー! あと早速誤字やらかしているので、読み直し徹底して行きたいと思います恥 (2021年7月12日 10時) (レス) id: 73f24c4202 (このIDを非表示/違反報告)
杳覇(プロフ) - よっしゃ新作きたーー!!! あああ一話目から面白そう……!! え、え、めっちゃ楽しみです……!! 更新待ってます!! あとその、「急な転向」って「急な転校」ではないでしょうか……! (2021年7月12日 10時) (レス) id: 7468c0248e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:やに | 作成日時:2021年7月12日 10時

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