▼ ページ11
「三国さん！ 」
神童さんの口から安堵の声が漏れる。そうだった、三国さんだ、ＧＫの三国さんはボールを抱きかかえる様にしてシュートを未然に防いでくれた。
「神童！ 遠慮はいらない、神のタクトで存分に攻めろ！ ゴールは俺が守る！ 行けッ！ この試合、勝つぞ！ 」
周りの先輩方が動揺するのが目の端々に映る。そうだ、今の雷門サッカー部はフィフスセクターの指示で自由に動けないのだと昨日神童さんに説明されたばかりだったのを忘れていた。三国さんはそんな中勇気を振り絞ってシュートを止めた、だから皆驚いているんだ。
「おい！ 」
「はい！？ 」
「まさかとは思ったがお前、あの反田か！ 」
先程シュートを打ち損ねた相手のＭＦが、ずんずんという効果音が付きそうな足取りで詰め寄ってくる。怖い。
「その、私は反田ですけどー……あの反田って？ 」
「チッ……！ 裏切り者らしく、今は俺達の敵って訳かよ」
「裏切りってそんな、敵とか言われても……だって私は雷門に」
「……噂通りの女だな。こんなのがファーストシード？ ふざけやがって！ 」
「わッ」
随分お怒りらしい。彼は肩をわざと私にぶつけてから天河原ゴール側へと運ばれたボールを追いかける。
「いてて…」
『雷門、反撃開始だ！ 』
「急いで追いかけないと！ 」
ボールを受け取った神童さんはそこそこ前にいたが、相手マークを振りほどくのに時間がかかった様ですぐに追いつく事ができた。
「神童さーーん！ こっちですこっち！ 」
「なッ、反田……！？ 」
私を見た神童さんの動きが一瞬鈍くなる。
「……ん、あっ！？ ごめんなさいまた持ち場離れて来ちゃいました戻ります！！ 」
「いや、いいよ。そこにいろ反田」
騒ぐ私だったが、冷静に神童さんはパスを出した。
『出た神童の
「──」
まるでオーケストラの指揮者みたいに、定められた譜面をなぞるような正確なパスコースの指示だった。
「止める！ 」
「わっ」
私に向かって蹴られたボールは相手によって軌道を逸らされ上へと跳ねる。
『反田へのパスは比嘉志に当たった！ これはラインを割りそうだ！ 』
「……やっぱりだ。違う」──これは私へのパスじゃない。
『おっと！？ このボールを西園がトラップ！ なんというジャンプ力だ！ 』
「ナイスパスです！ キャプテン！ 」
「ぱ、パスだと！？ 」
驚異的な跳躍力でボールを取り戻した西園君が、神童さんに親指を立てて笑った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 44人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「原作沿い」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
やに(プロフ) - 杳覇さん» くらちゃんコメントありがとうございます(^^) 頑張りますー！ あと早速誤字やらかしているので、読み直し徹底して行きたいと思います恥 (2021年7月12日 10時) (
レス) id: 73f24c4202 (このIDを非表示/違反報告)
杳覇(プロフ) - よっしゃ新作きたーー！！！ あああ一話目から面白そう……！！ え、え、めっちゃ楽しみです……！！ 更新待ってます！！ あとその、「急な転向」って「急な転校」ではないでしょうか……！ (2021年7月12日 10時) (レス) id: 7468c0248e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：やに | 作成日時：2021年7月12日 10時
