２ 種種 ページ26
２ 種種
取っては取られて、フェイントに引っ掛け引っ掛かる。お昼時だから人が少ないので広々と走れた。
最初の遠慮があった動きは見る影もない。トップスピードは同じ──じゃあ先を読もうと考え動く彼に対して、私はその先読みに瞬発力で応じてみせる。
ボールが一瞬浮いた。遠慮無しに蹴ろうとした足を、双方が思いとどまって──同時に止める。どこかへと飛んでいくボールではなく、お互いがお互いに興味津々だった。
改めて向き合うと、彼のギラついた水色の瞳が私の顔を映している。
「凄いや、久しぶりにこんなサッカーしたよ！ 」
「私も！ 」
「僕は雨宮太陽」
名乗られて気づいた。そうか、自己紹介をしていなかったんだ。
「私、反田典子！ 」
「てんこ……？ 」
「古典の典に、子供の子で典子だよ」
「そっか、典子かぁ」
グルグル、と切ないお腹の音が鳴る。携帯で時刻を見ると、皆とはぐれてから結構な時間が経っていた。
「うん、今日はこれでお終いにしよう。お腹空いただろうし、僕もそろそろ戻らないと」
「あ、アハハ……」
「またサッカーしよう」
「勿論！ 」
手を降って走っていく太陽を見送り、私はさっきどこかへ飛んでいったサッカーボールを探し始める。
携帯で葵ちゃんにメールを送ると、もう既に私は病院を出たと思っていたらしい。剣城自体の尾行は諦め、今は商店街の人々に彼の情報を聞いて回っているとの事だった。(剣城はゲームセンターにも足繁く通っているらしい。何で遊ぶんだろう？ )豚マンを食べて帰ろうという話になっているので、早くおいでとお誘いの言葉でメールは締められていた。
「うぅ、豚マン食べたい……」
早くボールを見つけて帰ろう。
空腹を自覚すると急に頭が食べ物に占拠される。あぁ豚マンにたっぷり辛子つけて齧り付きたい……。
「あれ？ 」
中庭から病院内へ入る途中の細長い通路にいたのは、葵ちゃんがぶつかった車椅子のお兄さんだった。彼の手元にはサッカーボールがあり、それには特徴的な焦げた様な汚れ具合とコーティングの剥がれがあって、私が探している物と酷似していた。というかあれは絶対に太陽のサッカーボールだ。
おそらく私達が使っていた物がこの辺りまで飛んできて、それを拾ってくれていたのだろう。
「おや、君はさっきの」
「そのボールって……ギャーッ剣城！？ 」
「え？ 」
ボールに目がいっていたせいで、お兄さんの隣にいる剣城にワンテンポ遅れて気づいた。
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やに(プロフ) - 杳覇さん» くらちゃんコメントありがとうございます(^^) 頑張りますー！ あと早速誤字やらかしているので、読み直し徹底して行きたいと思います恥 (2021年7月12日 10時) (
レス) id: 73f24c4202 (このIDを非表示/違反報告)
杳覇(プロフ) - よっしゃ新作きたーー！！！ あああ一話目から面白そう……！！ え、え、めっちゃ楽しみです……！！ 更新待ってます！！ あとその、「急な転向」って「急な転校」ではないでしょうか……！ (2021年7月12日 10時) (レス) id: 7468c0248e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：やに | 作成日時：2021年7月12日 10時
