アテナの鏡【inzmGO】 (ページ9)

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「円堂選手だ……！」
「本物だ……！」

　目を輝かせる松風及び小柄の少年の二人に、円堂氏はチラと視線をやって、そしてすぐに私の方へと逃げる様に戻す。

「フィフクセクターより派遣されました。以後お見知りおきを」
「サッカー部に入るのか」
「はい」
「そっか。宜しくな、一角」
「はい。宜しくお願いいたします」
「待ってください監督。その女子生徒、本当に入部させるんですか！？フィフスセクターのシードですよ……？俺は反対です」

　正ゴールキーパーの三国太一が立ち上がり抗議した。周りの三年生陣も彼の発言に頷いて賛同していた。

「シードだろうとなんだろうと関係ない。サッカー部に入りたい奴は誰だって大歓迎だ」
「アイランド観光の人達もそう言ってるんですか」
「……」──円堂氏が黙り込む。
「その点についてのご説明は、不肖黒雲が引き継ぎます」

　片手を自分の顔の位置に挙げて発言の許可を得る。

「まず今年度より長年スポンサーとして雷門を支えていたアイランド観光が、フィフクセクターからの助成を認めました」

　言葉の意味を察した面々が息を飲み俯いた。

「それにより雷門はフィフクセクターの管理下に組み込まれ、運営される事になりました。その運営に滞りがないようチームを監視するのが我々シードの職務。従って私の入部は決定事項です。入部を認めるも何も、既に部員とでもいいましょうか……。概要としては以上になりますが、ご質問は？」

　ざわつき始めた空気の中で、おずおずと松風が切り出す。

「……あのー、フィフクセクターって？」

　質問したのは松風だが、両サイドの少女と短身の少年も気になるらしい様子だ。

「やはり何も知らないようですね」
「えっ。ごめん」
「いえ、お気になさらないでください。後程、順を追ってご説明いたします。サッカー部に入るのでしたら、知らなかったでは済まない話ですので」
「ありがとう。えーと」
「黒雲一角です」
「黒雲……、これから宜しくね」
「はい」
「僕にも、僕にも教えて！」
「貴方は」
「僕西園信助。サッカー部に入るんだ」
「そうでしたか。それでは貴方も？」

　西園から少女へと視線を移すと、彼女は慌てて姿勢を正した。

「えぇっと、私は」
「葵サッカー部入るの？」
「もう、話してるんだから遮らないでよ天馬」

　思い思いに会話する、全員の声が綯交ぜになり先程までとは打って変わって部屋は騒々しくなった。