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後半開始後も一方的な試合が続いた。私は深く試合には干渉せず淡々と戦況を監視する。
──ふと、目が合った。
事前情報にない人物だったから注意深く意識して観察していたから、彼の方が私の視線に気づいたと言うべきか。
青色の目。水面に波紋が広がった様な、鉱石の断面の様な目。
彼は私を見て走る速度を緩めたが、それも一瞬の事で、また危うい調子でボールを追いかけ始めた。
「俺達に勝つ事などあり得ない。お前達のサッカー部は終わりなんだよ」
剣城さんの挑発に、肩で息をする雷門キャプテン・神童拓人は噛み付く事もできない。
「サッカー部は終わらない!! 」
彼の声はサッカー棟によく響いた。その青い瞳は怒りで揺れている。
「雷門サッカー部は誰にも渡さない──絶対に」
剣城さん、神童拓人、そして彼は最後に近くにいた私を睨んだ後、再び剣城さんへと視線を戻した。
「じゃあ奪ってやるよ!! 」
業が煮えたといった様子で、剣城さんが雷門陣営にボールを蹴り込む。彼が走った後の風圧で雷門の選手達はなす術無く吹き飛ばされてしまった。
「理解したか? お前が憧れている雷門は所詮この程度だ」
勝ちはおろか、このままでは無事に負けて終われるかどうかも怪しい試合に、心が折れた者がフィールドを去っていく。
所詮成績の為のサッカーだ。体を壊して人生を棒に振るリスクとを天秤にかければこうなるのは自然の成り行きである。
イレブンバンドに新たな情報が入った──
「やるよ」
「え……」
「さぁ、来な」
剣城さんと青い瞳の彼──松風天馬の会話が耳に入る。ボールは松風の足元にあった。剣城さんが気まぐれに寄越したのだろう。彼のプレイはどう見ても初心者のそれで、ボールを一時的に渡した所で試合には何の影響もないと判断したらしかった。
松風天馬。イレブンバンドに載せられた彼のデータには特筆すべき経歴は無い。しかしその事実は、却って私を焦燥に駆り立てた。
頬を風が撫でる。自身の横を彼がドリブルで抜いたのだと、やや遅れて気づいた。
一人、二人、三人と黒の騎士団のマークを突破する彼の背を、私は追いかける。
「……明らかに動きが違う」
非凡さは無いが、堅実に、それでいて型にはまらない独特な動き。自陣のディフェンスが全てが翻弄され遂にゴールキーパーの前まで迫っていた。鉄雄田が腰を落としてシュートに備える──が、彼は踵を返してこちらへと戻ってくる。
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しけ(プロフ) - 予備肉さん» ごめんね! (12月27日 2時) (レス) id: 73f24c4202 (このIDを非表示/違反報告)
予備肉 - 読みにくい (12月27日 2時) (レス) id: a7f9da8f5c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しけ | 作成日時:2023年7月6日 23時