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「頭を上げてください。聖帝の思惑がどうであろうと、典子はもう雷門の一員です」
「そーそー！ ここまで一緒にやってきたんだし、追い出すとかはあんまりでしょ」
ねぇ？ と浜野先輩は全員に笑いかける。
「ありがとう……！ あたしは女子サッカーと、クラブチームがどう動くか目を光らせておく。君達のサポートは任せてくれ」
かくして雷門イレブンは、聖帝を失脚させフィフスセクターを倒す為に動き出したのだ。
その後は自主練習に切り替わり現地解散となった。皆は帝国戦後の打ち上げに行ったが、塔子ちゃんから話があると言われたので私は途中から参加する事に。
塔子ちゃんの車に乗せてもらうと懐かしい香りがした。助手席の私は車を運転する塔子ちゃんの横顔をチラチラと盗み見ていたが、それに気づいた彼女はプッと吹き出した。
「何緊張してるんだよ」
「だ、だって！ 怒ってると思ったし……」
「怒ってるんだったら態々鬼道を説得しに東京まで来ないって」
先程の鬼道さんと塔子ちゃんの会話を思い出す。
『
『そんなの無いよ。だからこうして頭を下げに来たんだ』
『それでコイツが変わるのならば、そもそもお前がこうして頭を下げる必要も無かったんだがな』
『分かるよ、鬼道が典子を雷門から追い出したい気持ちは。けど、コイツを除け者にして成し遂げた革命に……取り戻したサッカー界に、堂々と胸を張れるのか？ 』
『……』
『あたしは、無理だ。典子が泣いてる姿はもう見れない』
どっちの言い分も、恐らく正しい。
円堂さんも、他の革命に関わる人達も二人の会話には口を挟めなかった。だからこそ神童先輩が──革命の主体である皆が──私を雷門イレブンだと言ってくれたお陰で私は追い出されずに済んだのだ。
私の命は蝋燭の火みたいなものなんだと、再度思い知らされる。
「……塔子ちゃんは今、どこで何してるの？ 」
「あたし？ あたしは向こうで、まぁ色々と。大人の事情であんまり話せないけど、サッカーは続けてるから気にするな」
「っ、そうなんだ！ 良かった……！ 塔子ちゃんまでサッカー嫌いになったらどうしようって」
「安心しなよ！ あたしは絶対サッカーから離れないからさ」
「うん……」
「にしてもだ。典子がシードになったのは知ってたけど、次の派遣先が雷門なんてビックリしたなぁ。志望したの？ 」
「うん。希望は出してはいたけど、すんなり通ってびっくりしたよ」
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作者名：やに | 作成日時：2022年9月11日 21時
