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「あのぉ……」
私はおずおずと手を挙げて発言の許可を取る。
「急にこんな事をしちゃってごめんなさい」
「謝って済む事じゃない！ 」
神童さんを抑えながら霧野さんが珍しく怒鳴った。私がキョトンとしていると苦虫を潰した様な顔で尋ねてくる。
「何か……、何か理由があるのか？ フィフスセクターに脅されたり」
「理由なんてない」
私が何か言う前に、剣城が割って入ってきた。軽く数回咳き込んだ後なおも言葉を続ける。
「それがソイツの本性だ」
「本性？ 」
「ああ。良かったな、早い段階で気づけて。コイツは自分が雷門を裏切ったつもりも無いぞ。……強い方の敵に回る、より強い相手と戦う……コイツがいつも言っていた
ギクリと顔が引きつる。
裏切り？ とんでもない。私はただ皆と本気のサッカーがしたくて、……だからずっと待ってた。
神童さんのレベルアップに付き合い、剣城と雷門の不和を取り持ち、松風や信助の特訓に付き合った。
さっきは不意打ちしてしまったけれど、今からなら皆も私を警戒してくれるから相手にしてくれるだろう。
「ぶっちゃけ海王も雷門も、私一人で戦うんだったら大差ないんですけど。ほらそれなら、楽しくサッカーしてくれる方と戦ったが絶対楽しいじゃないですか！ 」
楽しく、本気でサッカーしましょうね！
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後半戦開始から五分、反田典子のオウンゴールにより海王学園が点を追加し３ー１。雷門にとっては厳しい立ち上がりとなった。
反田と倉間の入れ替えを望む声が多数上がったが、これを円堂は拒否した。意図があるのだろう──松風をゴールキーパーにした事も化身習得の為と判明した以上、一見突拍子の無い采配に見えても訳があるに違いない──怒りを飲み込んで全員円堂の判断に渋々従った。
『反田が何故か下がっていくぞ！？ 』
雷門のキックオフから試合は再開されたが、神童へと渡ったボールはすぐに反田が奪ってしまう。彼女は海王学園の選手には目もくれず一目散に雷門ゴールへと向かって走り出した。
「おいおい今更？ 」──彼女のマークを任されていた、俊足自慢の湾田が冷や汗を浮かべて笑う。
剣城がやっとの思いで反田に追いつき足元のボールを狙った。
「おいで、ベルセルク」
遊ぼう。
まるで友達みたく己の化身に笑いかける。
異端兵ベルセルク──彼女の化身は、その細腕でランスロットを捻じ伏せてみせた。
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作者名：やに | 作成日時：2022年9月11日 21時
