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巻き上がった土煙が視界を遮っていたが、次第に晴れていく。炎が体の内へと戻っていく感覚がした。どうやら私は勢い余って化身を出してしまっていたらしい。
『ご、……ゴーールッ！！ 観客も騒然としています！ 雷門、ここでまさかの
ゴールには松風と、唯一私のボールに反応できていた剣城が仲良く重なって押し込まれていた。ランスロットを出す前に私の化身シュートに触れたんじゃそりゃいくら剣城だって飛ばされるのも無理はない。
「ハッ……！ 」
剣城ですら余裕無かったなら、松風なんて今も何が起こったのか分かっていないのでは？
「やっちゃったなぁ……」
「──典子！ 」
神童さんが私の肩に手をかける。震えているその手を尻目に私は唇を尖らせた。
「何のつもりだ……！ 味方へのパスには見えなかったぞ！！ 」
「うっ、すみません！ やらかしました」
「やらかしただって……？ 」
アールグレイの瞳が揺れる。
「つい興奮で蹴っちゃったけど、松風だって突然私がシュート打ってきても対応できる訳ないですよね！？ しくった……！ 」
他の皆も松風の化身の登場に気を取られて万全の状態じゃなかった。これではただの不意打ちだ。
「しかもそのまま打っちゃいました。私、化身使った技もちゃんと考えてたのに」
「ら……雷門のゴールへ、……シュートを打ったとでも言うのか」
「……？ はい！ 今度はちゃんと技も使います！ 」
「どうして」
「え？ 」
「お前はあれだけフィフスセクターの管理サッカーを、嫌っていたのに。どうして今更こんな、シードの様な真似をする」
「えぇ！？ 真似も何も、私シードですし……」
「帝国で……聞いたお前の言葉は、嘘だったんだな」
神童さんの両手に力が入ると、爪が若干食い込んでピリッと軽い痛みが走った。
呆然としていた雷門の皆が我にかえり、神童さんの異変に気づくとすぐに駆け寄ってきて私から彼を引き剥がす。
「落ち着け」
「離せ霧野」
「いいや駄目だ。離したら典子に掴みかかるだろ」
「お前は、お前は今の今まで、心の中では俺達を笑っていたのか？ 」
「あッ、おい神童！ やめろ、騒動を起こすのはマズい！ 」
「本当のサッカーを取り戻す為に、天河原中戦の時から力を貸してくれていたんじゃないのか……！ 仲間だと思っていたのは俺だけだったのか！？ 」
「よせって！ 」
霧野さんの静止を乱暴に振り払った神童さんが、潤んだ瞳で私を睨んだ。
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作者名：やに | 作成日時：2022年9月11日 21時
