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──前半戦はそれ以降雷門は得点のチャンスが作れず、荒波の様な海王の攻撃に耐え続ける時間が続いた。
ベンチで後半の作戦を円堂さんから聞いていた私達は、その突飛な案に思わず大きな声を出す。
「天馬をキーパーに！？ 」
霧野先輩がもう一度聞き返したが、円堂さんの訂正は入らない。
「ああ。天馬のポジションには霧野。お前が入れ」
フォーメーションは４ー４ー２で、松風は中盤の底にいる。霧野先輩はセンターバックだから少しだけ位置を上げる事になる。
「って事は、霧野が抜けてディフェンダーには」
「狩屋！ 後半から出れるな？ 」
「へ……はい」
当然守備が本業の狩屋君がその穴を埋める事になった。
「待ってください監督！ どうしてそんな事を……！ 」
「……すみません、円堂監督」
「三国さん？ 」
神童先輩を諌めて、三国先輩は円堂監督に何故か謝った。不思議に思っていると神妙な顔で円堂さんが目を伏せる。
「三国、お前は手を診てもらえ」
はい、と短く返事をして三国先輩は黒焦げのグローブを外す。近くにいた水鳥さんが息を飲むのが分かった。
手のひらが酷い火傷で皮膚がふやけてしまっている。日々のハードな練習が祟り、海王のシュートを受けて限界を超えたといった様子だった。
葵ちゃんが急いで救急箱を開ける。
「こんな手でアイツらのシュートを食らってたのか！？ 」
「……すまん、皆。これは俺の管理不足が招いた結果だ」
「さ、三国さんのせいじゃないですよ！ 」
「にしたって、一度もキーパーをやった事が無い天馬をキーパーにするなんて」
「勿論勝つ為だ」
「勝つ為って」
「天馬。前半戦、剣城がデスソードを打つ前。海王の浪川に行く手を阻まれたな？ あの時なんで剣城にパスを出した」
「え……」
「諦めたのか？ 化身使いに勝てないから逃げたのか？ 」
「違います！ ただ、ボールを奪われたら駄目だって。なんとかしなくちゃって思ったんです……」
「なら天馬。お前は典子がドリブルしてる途中、敵にボールを奪われたらどうする？ 」
「え！？ 」
「例え話だっての。静かにしてろ」──倉間先輩が私を小声で叱ってきた。
「それは、勿論カバーに行きます」
「な？ 」
「……あ」
「チャレンジして失敗しても、誰も責めはしない。折角の長所を自分で抑えるな！ なんとかしなくちゃなんて思わなくていい、全力でぶつかって、結果なんとかなるのがお前だろ？ 」
「なんとか……。そうだ、俺……」
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作者名：やに | 作成日時：2022年9月11日 21時
