▼ ページ23
教室へ戻ると掃除の為に各々所定の場所へと出ているらしく、人影は疎らだった。私は己の机から連絡帳を取り出し(やっぱり提出してなかった。)黒板に書いてある日直の名前を確認する。
「影山君！ 」
「あっ、反田さん。待ってたよ」
そう言って困った風に笑った彼は、本日の日直こと、影山輝君だ。私は彼の席へと駆け寄り、合掌した上で机に伏して謝罪する。
「ごめんなさい……！ もしかして昼休み潰しちゃった？ 」
「ううん、大丈夫。単語帳見てて暇はしてなかったから、気にしないでくださいね」
「面目ないぃー……」
「いえいえ！ その……それより、さっき怖い人に呼ばれてましたけど」
「剣城の事？ 」
「大丈夫だった？ 」
影山君はおずおずと上目遣いで訪ねてくる。
「大丈夫だよ〜！ 剣城はそんな、影山君が想像してる程怖い奴じゃないから！ ……多分！ 」
「た、多分かぁ」
入学式前にサッカー部を襲い、セカンドランクチームを崩壊させたのは事実なので……。てか、それだけ聞いたら普通に十分怖い奴だな。
「……でも、カッコイイですよね。彼、剣城君でしたっけ。この間のサッカーの試合で大活躍だったじゃないですか」
「そうなんだよ〜！ もしかして観てたの？ 」
「いえ、僕は新聞の記事を見ただけなんだけど、一年生なのに凄いなって思って」
「うんうん。……ねぇ。影山君ってサッカー好きなの？ 」
「えっ」
「サッカー新聞読むくらいだし、好きでしょ？ 」
「えっと……」
私が詰め寄ると影山君は椅子ごとジワジワ後退する。
「もしかしてサッカーやってたりする？ てか何部なんだっけ？ 」
「ええとその……ご、ごめん！ 僕職員室行かなきゃ！ 」
「あ！ 」
影山君は勢い良く椅子から腰を上げると、クラス全員分の連絡帳を抱えて教室から逃げる様に出ていってしまった。
「待って影山君──て、あれ」
私も慌てて廊下に顔を出すが、既に影山君の姿形は見えない。
「足、はっや〜……！ 」
私がボールを強く蹴りつけると、人工芝へ松風が滑る様にして倒れた。
「うーん……」
「もう一回！ 」
「松風ストップ！ ちょっと休憩しよ！ 」
私は松風を静止させ、顎に手を当て考える。
朝練の時に狩屋君が提案した様に、放課後は私と神童先輩、そして松風の三人で贅沢にグラウンドを使い化身の特訓をする事になったのだが。
「全然駄目だね」
「う、全然駄目か」
「何でかなぁ」
松風の背から、化身どころかオーラすら出てこない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 30人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：やに | 作成日時：2022年9月11日 21時
