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「なーんか怪しいよね典子」
「えっ、……怪しいって？ 」
「挙動不審って事！ さては何か隠してるでしょ！ 」
「いぃッ、いややそんな、そんな事ないよ！？ 」
私はしどろもどろで信助の言葉を否定する。霧野先輩と約束したのだからそうペラペラと口を割っては合わせる顔がない。
狩屋君と信助から逃げる様に視線を逸らすと、今度は剣城が睨んでいるのに気づいた。
お助け！
「……ソイツに落ち着きがないのは今に始まった事じゃない」
念が通じたのかは分からないが助け舟を出してくれる剣城。不服そうにする信助。
「ホントに何もないの？ 」
「う、うん」
「それならいいけど。俺が話しかける度にビクビクしてるから怖がられてるんじゃないかと思ってさ」
「そんなー……気のせいじゃないかなー……？ 」
狩屋君の目尻が尖る。そう、この目付きだ。狩屋君は私や霧野先輩にだけこの視線を向けてくる。
「そう、安心した。でも何かあるならすぐ言ってよ？ 俺、反田さんの事もっと知りたいからさ」
彼は元の丸っこい目に戻って優しく笑った。
「反田さん。別のクラスの人が呼んでるよ」
昼御飯も終わりダラダラと友人と駄弁っていたら、クラスメイトの男子が焦った様子で私を呼ぶ。
「ありゃ、剣城？ 」
紫の改造制服に身を包んだ彼はどうやらこのクラスでも有名人らしい。恐らく、あまり良くない意味で。
ちょっとした騒動になりつつある教室を私は慌てて飛び出した。
「着いて来い」
「あっ、ちょっと！ 」
どこに行くのかと問う暇もない。仕方ないので私は剣城の後を着いて行く事にした。
本校舎を出て体育館の裏に着くと、どうやらここが目的地だったらしく、剣城は足を止めて私と向き合った。
「今朝、狩屋や西園に何を隠した」
「気づいてたの？ 」
「お前の嘘に引っかかるのは松風みたいなお人好しくらいだろ」
他の奴らは気を遣って追求しなかっただけだ。
そ、そう……。
「あのさ、今から私が言う事、他の人に言ったりしないでね」
剣城は黙って頷く。
「剣城はアルティメットサンダーの作戦書で、ちょっと揉め事あったの知ってる？ 」
「……いや、知らない」
私は剣城に先入観を与えない様、出来るだけ客観的に事件の概要を説明した。
「で、ここからは私が霧野先輩から聞いた話なんだけど」
「……！ おい」
「ムガっ」
「──こんな所で何してるの？ 」
剣城に口元を手で乱暴に塞がれたと同時に、私達の前に狩屋君が現れた。
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作者名：やに | 作成日時：2022年9月11日 21時
